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《ブラジル》市民殺害の兵士9人を釈放=「確定前の前倒し執行は違法」と=自由の身で裁判に参加

マルクス・ドス・サントスSTM長官(STM)

マルクス・ドス・サントスSTM長官(STM)

 【既報関連】ブラジル高等軍裁判所(STM、長官はマルクス・ドス・サントス海軍大将)は23日、4月7日にリオ市西部グアダルーペ区で発生した、音楽家のエヴァルド・ローザ・ドス・サントスさん殺害事件に関与した疑いで、身柄を拘束していた陸軍兵士9人の釈放を決めたと、23、24日付伯字各紙・サイトが報じた。
 事件はドス・サントスさんが家族らを乗せて運転していた車に、軍兵士12人が銃弾を浴びせ、ドス・サントスさんが死亡。現場を通りがかり、家族を助けようとしたルシアノ・マセドさんも被弾し、11日後に死亡したものだ。
 軍兵士12人は今月10日に正式に起訴され、11日の段階で刑事被告になっている。彼らの罪状は、殺人、殺人未遂(両方とも加重量刑)、救助義務放棄などだ。
 被告となった軍兵士12人の内、3人は自由の身で裁判を待っている。だが、残る9人は無期限で身柄を勾留され、人身保護令適用を申請していた。この申請は8日と23日の審理で受理され、9人は24日の朝、リオ市デオドーロの施設から出た。9人の釈放には、条件付を含めるとSTM判事14人中13人が賛成した。STM法廷は15人の判事で構成され、10人が軍関係者、5人は文民出身者だ。9人の釈放への唯一の反対者は文民判事のエリザベッチ・ロッシャ氏だった。
 9人の身柄拘束は捜査妨害を懸念したもので、有罪確定ではない。また、釈放も無罪放免ではなく、自宅に戻りつつ裁判は継続される。陸軍は当面、9人を内勤扱いとする意向だ。
 「兵士たちは、ドス・サントスさんの車を、数分前に近くで発生していた強盗事件の犯人の車と勘違いした」と捜査担当の軍検察は見ている。
 事件当初、「80発以上の銃弾が、罪のない市民の車に浴びせられ…」と報じられ、加害者に対する憤怒と恐怖を引き起こしていたが、検察の調べでは、実際にライフルやピストルから放たれた銃弾は257発で、そのうち62発がドス・サントスさんの車に当たっていた。
 釈放に賛同した判事たちは、「長すぎる勾留は未確定の刑の前倒し執行にすぎない」とか、「釈放しても捜査や裁判の進行に悪影響はない」と主張した。報告官を務めたルシオ・マリオ・ゴエス陸軍大将も、「有罪かどうかさえ確定する前の刑の執行は法的論理にかなわない」と主張し、「9人の無条件釈放」に投票した。
 釈放に唯一反対したロッシャ判事は、「9人は事件直後の取調べで、正当防衛だったと虚偽の供述をしており、釈放したら捜査の妨げになりうる」と主張したが、他の判事の賛同は得られなかった。