【既報関連】今年第1四半期のGDPが前四半期比マイナス0・2%と、2年ぶりのマイナス成長だったことが発表された5月30日、パウロ・ゲデス経済相が勤続期間保障基金(FGTS)休眠口座の引き出し解禁や、社会統合基金/公務員財形計画(PIS/PASEP)休眠口座の引き出し解禁の検討を示唆したと、5月31日付現地各紙が報じた。
これらの狙いは一般家計に臨時収入を与えることで、負債解消や内需拡大に繋げることだ。
FGTSは、正規雇用の社員に対して、雇用元の企業が積み立てている退職金を運用する基金で、連邦貯蓄銀行(CAIXA)が運営している。地元紙の一つは、「現在、FGTSには5250億レアルの積み立てがある。政府が引き出しを認める220億レアルは全体の5%以下で、運用に支障をきたすほどではない」としている。
政府はまた、、これ以外にも、「各州政府への新規融資」、「プレサル油田割り当て金の増額」などを計画している。
別の地元紙は、「FGTSとPIS/PASEP解禁による経済効果は410億レアル」とも試算している。
ただし、各景気刺激策を議会に提出するタイミングは、政府が最優先で進めている社会保障制度改革の進行具合との兼ね合いで決まる。
ゲデス経済相も、「社会保障制度改革が承認されるとの確信が得られて初めて、(FGTS解禁などの)景気刺激策は導入される」と語った。
テメル政権下の2017年に行われたFGTS休眠口座解禁は、約2600万人の労働者に約440億レアル分の恩恵(1人平均約1690レアル)をもたらした。
これが消費に回ることで、同年のGDPは0・7%ポイント押し上げられた。同年のGDP成長率は1・1%だったので、FGTS解禁がなければGDP成長率は0・4%だった計算だ。
ゲデス経済相は、引き出し対象とする口座を休眠口座に限定せず、現在も動きのある口座からの引き出しも認める可能性も口にした。ただ、その場合は引き出される金額が大きくなり、家屋購入用の融資にも影響するので、経済省スタッフが分析中だ。引き出せる金額や引き出しのスケジュールなどもまだ検討中だ。
ゲデス経済相と公的銀行総裁たちの間では話し合いが行われているが、FGTSを実際に取り扱うCAIXAのスタッフまでは具体的な話は来ていない模様だ。
PIS/PASEPの休眠口座には、1971年から1988年まで正規雇用として働いていた人が積み立てたが引き出していない資金がほぼ210億レアルある。
「20~30億レアルが引き落とされると連邦政府は見込んでいる」と地元紙は分析しているが、権利者が死亡している場合や権利者不明な資金もあり、政府見込みを下回る可能性もある。同じことは昨年、テメル政権が同様の措置を取った時も発生した。