日伯福祉援護協会(与儀昭雄会長)は「第2回日系福祉団体フォーラム」を5月29日、援協本部ビルで行った。テーマは「高齢者に対する支援と人生の終わりに向けた活動に関する日系社会の課題」。専門家による講演や、福祉団体関係者と参加者による討論会が行われ、約80人が参加した。
同フォーラムには援協福祉施設の役員、高齢者福祉施設「憩の園」を運営する救済会の佐藤直会長、社会福祉法人「こどものその」の小田セルジオ副理事長、在聖総領事館から森田聡領事、国際協力機構(JICA)ブラジル事務局の佐藤洋史所長らも同席した。
午後1時頃、同フォーラムが開会。与儀会長が援協の医療福祉施設を紹介した。森田領事からは「日系社会の世代交代、高齢化が進み、どの福祉施設も厳しい経営状況にあるが、一丸となって備えて将来の問題を予防すべき」と話があった。
老年病専門医の上原カルロス、JICAボランティアの長谷川美津子2氏による講演が行われた。上原氏は「高齢化と支援基準に与える影響」をテーマに、ブラジルの将来の高齢化と医療提供の不足について説明した。
ブラジルも2030年には60歳以上の高齢者の割合が18%にまで増加し、日本の後を追うことになる。各自が体調管理をしないと、医療提供が不足すると述べた。治療が必要な高齢者をブラジルでは施設に預けることが多く、施設が不足して利用希望者に対応しきれない現状があるという。
長谷川氏のテーマは「人生終活」。巡回診療時に行った調査によれば「介護される場合に誰に面倒を見てもらいたいか」との質問に対し、ブラジルでは4分の1が「考えていない」と回答した。日本の類似の調査に比べると高い割合だという。
「介護が必要になった場合や亡くなった場合、家族にどう対応してほしいのか、元気な間に周囲に伝えておくことが重要」と説明。「人生の終わりを充実して過ごすためにも終活は重要だ」と語ると、来場者らは真剣に頷きながらメモをとっていた。
フォーラム終了後、運営を担当した援協の園田昭憲福祉委員長は「参加者間の悩みを共有でき、横の繋がりを作れたと思う。だが時間が足りなかったように見え、申し訳なかった。今後もこのような催しを行っていきたい」と今後への意気込みを見せた。
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5月29日に行われた「第2回日系福祉団体フォーラム」では、ポ語を中心に進められ、医療の話題では専門的な用語もあったためか、一世の参加者から「難しくて分かりにくかった部分もあった」との意見も。長谷川氏の講演は日本語だったが、通訳によりポ語でも伝えられた。しかし、その他についてはポ語のみで行われ、日本語への通訳はなかった。日系社会の高齢化について考えるならば、一世が話題の中心になるはず。医療や終活への理解を広めるためにも、今後の催しでは日本語での対応も考えてほしいところ。
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