石川県人会(森永正行ジェラルド会長)の「第20回文化祭」が8、9両日に、サンパウロ市の同会館で開催された。二日間で460人が来場する盛況ぶりで、来場者の4割は非日系人。水彩画、絵手紙、陶芸、生け花など、同会館で行われている講習の1年間の成果が発表された。また、陶芸以外の講習はワークショップも開催され、机いっぱいに参加者が座っていた。
8日午前10時から開会式には野口泰サンパウロ聖総領事も出席し、約50人が参加。森永会長は「この文化祭は県人会でも数少ない文化のイベント。これが日本文化普及に繋がれば」と力強く語った。
ブラジル日本都道府県人会連合会の山田康夫会長は「県人会の中で、文化祭開催は石川県のみ。文化に対する石川県の思いは強い。これからも県連に力を貸してほしい」と豊かな文化を守り続ける姿を称賛した。
司会を務めていた相談役の小堀勇ジェラルドさんは、石川県が加賀百万石と呼ばれることに言及し、「石川県の前田家の十九代目はブラジル生まれ。十八代目がブラジルに駐在だった時に生まれたんですよ」と驚きのエピソードを披露した。
続いて竹下義康相談役が「ますますの長寿と会の発展を祈って」とした「鶴亀」の謡を披露。箏曲宮坂道雄の会が「さくら」、「荒城の月」、「ふるさと」を琴で演奏すると、会場からは感嘆のため息が聞こえた。
今年の県費研修生で2カ月間デザイン技術を学んだデザイナーの東野優造カイオさん(31、三世)が会場レイアウトを担当。「見た目を大事にする日本文化を学び、配置やパンフレット作りなどこだわった」と語る。パンフレットは情報を厳選して写真を強調し、細部にこだわりを見せた。
水彩画講師を務める脇坂グラシエラさんの教室からは、20人が32作品を展示した。「水彩画は光と陰影を描き、キャンバスに白を残し、色彩も透明感があるものを塗る」と説明する。今年2月から始めたアンジェラ・ミランガさんは(63)は、カンピーナス大学で水彩画教室を探している時に脇坂作品を見て、同講習参加を決めた。「大切な友人やその母と孫を描きたかった」と語るとモデルとなったレジーナ・シウヴァさん(62)は感激して喜んだ。
絵手紙講師の石井恵子さんは、「絵手紙は石川県人会を中心に、アマゾンやブラジリア等の全伯に広がっている」と語る。サウーデ日本語学校の生徒らの作品も展示され、葉書の形も羽子板や鯉のぼり等の工夫がなされていた。昔あった刺繍の講習に参加していた若林敦子さん(81、千葉県)は「素敵な作品ばかり」と微笑んだ。
池坊ブラジル支部の河村徳子支部長は「今回は令和をイメージして、出発、前進をテーマに、前向きな明るい作品にしました」と説明。ブラジルらしい花材も扱い、会場内を華やかに彩った。
陶芸講師を務める古田エレーナさん(73、二世)と九十九ラッシーさん(78、二世)は二十年以上も陶芸の講習に参加している。古田さんは「97年10月から始まり、今は生徒12人、作品は500点ほど。陶芸は面白い。焼いた時によって作品の出来も違う。失敗したとがっかりしていても、後から見せ方を変えると良かったりする。不思議よね」と笑った。