パウロ・ゲデス経済相の推薦で、世界銀行の役職を離れて社会経済開発銀行(BNDES)総裁に就任していたジョアキン・レヴィ氏が、16日に辞表を提出。政財界に大きな波紋を投げかけたと16、17日付伯字紙、サイトが報じた。
現政権の経済スタッフで初の辞任は、ボルソナロ氏の挑発が直接的な原因だ。大統領は15日、BNDESの総会で役職に指名されたマルコス・バルボーザ・ピント氏が労働者党(PT)政権時代に同行で働いた事がある事を指摘し、レヴィ氏に「あいつを切れ。さもなくばお前を解雇する」と宣言。メディアの前でも、レヴィ氏解任を匂わす発言を行った。
これを受け、ピント氏は同日中にレヴィ氏に辞表を提出。レヴィ氏も、16日にゲデス氏に辞任の意を伝えた。
レヴィ氏は世界的に知られた経済学者で、政党を超えた実力者として、カルドーゾ政権(社会民主党)以来、全ての政権で公職を担ってきた実務派だ。11日の国立インジオ保護財団(FUNAI)総裁や13日の大統領府秘書室長官、14日の郵便局総裁解任に次ぐ辞任で、現政権の解雇・辞任者は閣僚3人、公社公団総裁9人になった。
ピント氏は中銀元総裁のアルミニオ・フラガ氏と共に投資会社を経営。同氏も広く名が知られた経済学者で、同氏指名は同行の定款通り、総会でも承認されていた。
レヴィ氏辞任の報は、政界と経済界の双方を揺るがした。ロドリゴ・マイア下院議長は16日、数日前に発した「政府は危機の製造所」との表現を繰り返し、ボルソナロ氏に同調し、「PT関係者を入れるとは」と元総裁を批判した経済相への戸惑いを隠さなかった。
連邦議員にとってのレヴィ氏は諸改革を進めるための保障の一つで、現政権の将来が読めないとの声も聞こえ始めた。
また、3月開設のBNDESに関する下院の議会調査委員会(CPI)は、PT政権時代に同行が行った中南米などの左派政権諸国や食肉大手のJBSなどへの融資に関する資料提出の遅れと辞任の関連性も含めた経緯説明のため、レヴィ氏召喚の可否を決める。
左派政権諸国やJBSへの融資疑惑はラヴァ・ジャット作戦の中で表面化。大統領も選挙中から真相解明を約束していたが、提出済みの資料は負債者のリスト位で、不満を募らせていた。
レヴィ氏が、BNDESから国庫への返済額の急な引き上げへの不満を表明していた事や、同行の株式売却が政府の思い描いたペースで進んでいなかった事なども緊張関係を招いていたという。
大統領と経済相は17日も会合を開き、後任人事などを話し合っているが、財界関係者は、ボルソナロ氏らの態度が外国人投資らに与える影響なども懸念。経済スタッフの人選もさらに難しくなると見られている。