【日本在住サッカーライター=下薗昌記(元本紙記者)】日本代表が20年ぶりに招待枠で出場したコパ・アメリカ。グループステージの最終節でエクアドルと引き分け、決勝トーナメント進出は逃したが、大会を通して注目を集めたのが「メッシ・ジャポネス(日本のメッシ)」こと、久保建英(たけふさ)だった。18歳でスペインの名門チーム、レアルマドリーへの移籍が決まった日本人を南米はどう見たのか振り返る。
来年に控える東京五輪世代を中心に構成された今回の日本代表だが、チーム最年少での参加となった久保は、大会前から南米各国で「メッシ・ジャポネス(ハポネス)」として一定の注目を集めていた。
スペインの名門バルセロナの下部組織でプレーした経験を持ち、左利きでもあることからアルゼンチン代表の天才メッシに例えられることが多い久保。そんな18歳に対する注目度が飛躍的に上がったのは、コパ・アメリカの開幕戦が行われた14日のことだった。
スペイン名門チームの発表で一気に高まる注目
レアルマドリーが久保の獲得を発表すると一気にブラジル人記者らの注目も高まっていく。
ブラジル対ボリビア戦の取材のため、モルンビースタジアムにいた筆者のもとにも旧知の記者はもちろん、面識のない記者からも久保について逆取材を受けるはめになった。日本代表が練習した15日、パカエンブースタジアムには久保目当てのブラジル人記者が一気に増加。
グローボ・エスポルテのマルセロ・ブラガ記者は「レアルマドリーと契約する日本人が現れた。そりゃ、どんな選手なのか我々が注目するのは当たり前さ」と熱い視線を送っていたが、久保に注目していたのはメディアだけではなく、対戦するチリのコメンテーターも同様だった。
日本と対戦したチリは大会前から「日本のメッシとは何者だ」などと久保について大きく報じられていたこともあり、チリ代表の名選手で今大会はTVコメンテーターとして取材するイバン・サモラーノ氏も、熱い視線を送っていた。
実際、0対4で大敗したものの、17日のチリ戦でA代表初先発を飾った久保は、前回王者に対しても動じることなくプレー。ゴールこそ奪えなかったものの世界的に知られるビダルとメデルを一気にドリブルで抜き去り、際どいシュートを放つなど「日本のメッシ」らしい一面も披露した。
流暢なスペイン語
プレー面も当然際立つ久保ではあるが、従来の日本のスター選手とは異なる強みが、18歳とは思えないパーソナリティだ。バルセロナの下部組織で過ごしたこともあり、当然スペイン語は流暢に話すのだが、チリ戦後も試合が終了すると、判定について自ら審判のもとに足を運んでコミュニケーション。南米メディアからの取材に対しても、堂々たる振る舞いを見せていた。
そんな久保が今大会、最後の勇姿を見せたのが24日のエクアドル戦だった。勝てば準々決勝進出が決まる一戦で、日本は1対1の引き分けに終わった。だが後半終了間際、久保が一度はゴールネットを揺さぶったものの、オフサイドでノーゴールに。映像でプレーを振り返るVAR判定の最中、思わず両手を合わせて祈った姿だけは18歳ならではの初々しさだったが、その祈りは届かなかった。
「普段やることがない相手と戦えて楽しかった」とコパ・アメリカの3試合を振り返った久保。日本代表は2引き分けに留まったが、「日本のメッシ」は確かな足跡をブラジルの地に残した。