ブラジルとアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの4カ国が加盟する南米南部共同市場(メルコスル)とEUは6月28日、ベルギーのブリュッセルで自由貿易交渉で基本合意した。6月29日付ブラジル各紙が報じている。
メルコスル、EU加盟国は全体で7億8千万人の人口を誇り、国内総生産(GDP)の総計は世界全体のほぼ4分の1を占める。双方の代表者たちは、今回の合意を〃歴史的〃と評価した。発効となれば、世界最大の自由貿易エリアの誕生となる。
EUはメルコスルにとり、中国に次ぐ世界2番目の貿易市場だ。ブラジルの場合、現在EUに輸出している品目中、24%だけが関税なしで輸出されている。メルコスルからの輸出は、今後10年間で90%が関税なしとなる見込みだ。残り10%は部分的な関税税率引き下げ、または輸入量制限の対象となる。
2018年のメルコスルからEUへの輸出は426億ユーロで、EUからメルコスルへの輸出は450億ユーロだった。
EUからブラジルに入ってくる品目も関税なしとなるが、ブラジル側に課せられた実施期限は15年間だ。
EUとメルコスルの貿易自由化交渉はほぼ20年かかっており、2000年代初頭に一旦、活性化した。だが、ブラジルで左派のルーラ政権(労働者党・PT)が誕生した03年以降、交渉が中断していた。
しかし、2016年にルーラの後継者であるジウマ元大統領が罷免され、テメル政権(民主運動・MDB)が誕生したことで交渉が再開。今年発足したボルソナロ政権も、EUとの交渉成立を優先課題にしていた。
ブラジル経済省は、今回の合意により、ブラジルのGDPは今後15年間で875億ドル程度(場合によっては1250億ドル程度)拡大すると試算している。
EU側からは、「米国と中国が激しい貿易戦争を繰り広げる中、EUとメルコスル間の合意成立は、とりわけ大きな意味を持つ」との声明も出された。
ただし、正式調印までには、事務方による技術的、または法的な細部の詰めが残っているため、関税撤廃期限までのカウントダウンはすぐには始まらない。
また、合意文書は、メルコスル加盟諸国の議会と、EU議会ならびにEU加盟諸国の議会の承認を得る必要もある。さらに、EU評議委員たちからの賛同も必要だ。
ブラジル外務省、農牧供給省によると、合意内容には、関税引き下げだけでなく、製品の衛生基準に関する取り決め、サービス産業や投資の取り扱い、政府購入に関するもの、知的所有権なども含まれているという。
ブラジルのボルソナロ大統領は6月28日に、「歴史的な出来事。これまでで最も重要な貿易合意の一つで、ブラジル経済に多大なる利益をもたらす」とツイッターで投稿した。