連邦下院は10日、社会保障制度改革案を賛成379票、反対131票(欠席3)で承認した。ボルソナロ政権の最優先課題である同法案は、憲法改正法案であるため、上下両院で、議員定数60%以上の賛成が2回必要だ。
定数513人の下院での承認には308票の賛成が必要だ。この「308」という数字を作るために、前テメル政権も苦心し、結局挫折したが、新政権はロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)の活躍で、308を71も上回る379票の賛成を獲得した。
今年2月に政府が提出した案では、歳出削減規模は10年間で1兆2千億レアルだったが、議員たちを説得する過程で9339億レアルに規模が縮小した。これに、社会保障制度改革により発生する歳入増の分を差し引きすると、削減規模は9875億レアルだ。
改革案と現行制度の最大の違いは、年金受給開始最低年齢を男性が65歳、女性は62歳としたことだ。これにより、40代、50代での年金生活入りが基本的に出来なくなる。ただし、農村労働者、教師、連邦警察などでは例外がある。
ボルソナロ大統領は10日午後8時21分に、「社会保障制度改革案の第1回承認を果たしたロドリゴ・マイア議長、下院議会を祝福したい。ブラジルはますます雇用回復、繁栄の道を進む」とツイートした。
しかし、10日に承認されたのは、根幹となる基本文書(texto-base)のみで、11日も修正動議(destaque)の検討と個別投票が続いている。修正動議は受給条件を緩くしたり、受給額を上げたりして、歳出削減規模を減らす性質のもので、承認されると、歳出削減効果が9875億レアルより縮小する可能性もある。
下院で2回目の承認が達成されたら、同案は上院での審議に回される。上院でも、委員会審議から本会議採決(2度)のプロセスを通る。上院の定数は81人だから、承認に必要な票数は最低49票だ。
社会保障制度改革問題に関する、最近の大きな争点は「地方公務員にも連邦公務員と一律の年金受給規定を適用するか否か」だった。マイア議長は、本会議で採決する際にこの問題も盛り込みたいと考えていたが、叶わなかった。このため、上院では、下院の社会保障改革案採決を行っているのと並行して、地方公務員を年金制度改革対象に含めるための法案作成作業が始まっている。
10日の株式市場は社会保障改革案の承認を受け、市場最高値を更新。サンパウロ市株式市場指数(Ibovespa)は1・23%増の10万5817ポイントをつけた。また為替市場もドル安レアル高に振れ、0・7%ドル安の1ドル=3・759レをつけた。これは、今年2月以来となるドル安水準だ。