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《ブラジル》劣化の一途たどるインフラ=「忘却の道路」の報告書まで

 国際ビジネスコンサルタント会社、インテルB(リオ本社)社長で経済学者のクラウジオ・フリスチャック氏の調査によると、ブラジルは長年、道路や港湾、鉄道などのインフラ整備を怠っており、1980年代には国内総生産(GDP)のほぼ60%だったインフラストック効果が、2018年には36・3%に落ち込んだと、15日付現地紙が報じた。
 インフラストック効果とは、インフラ整備によって得られる継続的かつ中長期的効果(防災などの安全・安心効果、国民生活の質や経済生産性の向上)のこと。ブラジルでは、新規インフラの整備だけでなく、既存インフラの補修にも中々予算が付かず(または払い出されず)、時と共に劣化、価値を落としている。
 調査によると、現在機能しているインフラ設備の多くは建設後30~40年が経過しており、その間、まともなメンテナンスが行われてこなかった。メンテナンスを怠ると、事故による危険度や使用コストが高まる。
 フリスチャック氏は、「まともなメンテナンスが行われていれば、インフラストック効果の対GDP比は60%のままだったはず」と語る。経済的に成熟した国では65~85%が一般的だ。
 同氏はまた、「日本やフィンランドのような高レベルのインフラを整えようと言っているのではない。国民が衛生的な水を使えるような、そうした基本レベルの話をしている」とした。
 ブラジルは未だ、約1億人が生活排水垂れ流しの状態にあり、3500万人の住居には水道が通っていない。配水管の保守も不十分で、水漏れや盗水で上水の4割近くが失われている。
 道路交通も状況は似ている。2001年から2017年にかけて、交通インフラの整備に使われてきた経費は、年平均でGDPの0・67%のみだった。本来、理想的な値は2%とされている。
 非営利団体の全国運輸連合(CNT・本部ブラジリア)は、「忘却のブラジル道路」という題で、メンテナンス状況が最悪の幹線道路15区間に関する調査報告をまとめた。これらの区間の保守経費は年平均6万6500レアル/キロで、全国平均の14万4300レアル/キロの半分以下。キロ当たりの経費が最少だったのは、パラー州マラバー~ドン・エリゼウ間だ。
 CNTのブルーノ・バチスタ氏によると、「15の区間は最低限の補修さえ行われておらず、輸送環境が年々悪化。メンテナンス不足で生じる損失が新規の投資分も帳消しにしている」という。