パウロ・ゲデス経済相は17日、滞在先のアルゼンチン、サンタフェで、勤続期間保障基金(FGTS)と社会統合基金/公務員財形計画(PIS/PASEP)からの引き出し解禁を表明した。2017年にテメル政権が採用し、同年の国内総生産(GDP)成長率を0・61%ポイント押し上げた政策を繰り返すことで、低調なブラジル経済を活気付けることが狙いだ。17、18日付現地各紙が報じている。
FGTSは正規雇用の社員のために企業負担で行う退職金積立制度で、国営の連邦貯蓄銀行(CAIXA)が管理。CAIXAはこの積立金を一般国民が不動産を購入する際の融資資金として運用する。FGTSの金は基本的に自由に引き出すことが出来ないが、政府側は、引き出しを認めることで、消費促進を期待している。これまで行われてきたFGTSの引き出し解禁は休眠口座に限定されていたが、今回は実際に稼動している口座からも引き出せる。
経済政策班は、この政策によってGDP成長率が0・3%ポイント(%P)アップし、年末時点のGDPが、2年前と同じ、1・1%の成長となると見込んでいる。
関係者によると、ゲデス経済相は、政治経済局内のスタッフに対し、「CAIXAが不動産購入資金融資を行うための資金は残しておくように」と命じた。これにより、引き出し解禁の総額は300億レ程度になるだろうと、エスタード(E)紙は報じた。
FGTS口座から引き出せる比率は、口座の残高によって変わり、10~35%の間で上下する見込みだ。17日付E紙は関係者の話として、「積立額が5千レまでは35%、5千レ~1万レは30%、1万レ~5万レの場合は未定だが、5万レ以上なら10%引きおろせる」と報じた。
サンパウロ市に本社があるLCAコンサルタント社所属エコノミストのヴィトル・ヴィダル氏は、「2017年に比べて、債務不履行に陥っている世帯が少ないため、FGTS引き出しによる〃臨時収入〃は、負債解消ではなく、消費に回ると考えられる。よって、GDP押し上げ効果は17年よりも大きいのではないか」と見ている。17年は2590万人の国民が、総計440億レアルを引き出したが、その4割は負債解消に消えた。
ただ、FGTSの資金の本来の使い道である、「住宅購入時の融資」や連邦政府の持ち家政策「ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ」などに回る資金が減ることに対しては、建設業界から、不満の声も出ている。
サンパウロ州建設業組合(Sinduscom)の副会長ロナウド・クリー氏は、「『この政策は我々に不利』と言ってるのではない。ブラジル国民全体にとって良い政策とは言えない。効果は一時的で、GDPの成長を少しは手伝うかもしれないが、雇用を生み出し、税金を納める業界が蚊帳の外になる」と語った。