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《ブラジル》大統領が政府機関を批判=森林伐採のデータは嘘?=Inpeや科学者は反論

ボルソナロ大統領からの批判後も、科学者としての立場を貫こうとするガウヴァン氏(Divulgação/Inpe)

 ボルソナロ大統領が19日の外国人ジャーナリストとの朝食会で、国立宇宙研究所(Inpe)が発表した法定アマゾンの森林伐採に関するデータや、同研究所の仕事に対する疑問や批判を表明した事を受け、Inpeの所長が「容認しがたい攻撃」と反論したと19~22日付現地紙、サイトが報じている。
 Inpeは科学技術省傘下の研究機関で、気象用・通信用の観測衛星を使い、アマゾンの森林伐採の監視などを行う。19日の大統領の疑問や批判は、6月のアマゾンの森林伐採面積は昨年同月比88%増の920・4平方キロに及んだとの報告を受けたものだ。
 6月のデータはDETERと呼ばれる森林伐採管理システムによるもので、そのデータは毎日、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)に送られている。このシステムは森林伐採、土地の侵食や森林火災、製材搬出などの動きを、最小1ヘクタールからほぼリアルタイムで把握できるため、環境警察などはそのデータを、どの地域でどのような動きが出ているかをこまめにとらえ、伐採拡大などを防ぐための資料としている。
 他方、年に1度報告される公式の森林伐採面積のデータはPRODESと呼ばれるシステムを利用しており、低く刈り込まれた森林伐採に関するデータを収集する。ただし、識別できる伐採面積は6・25ヘクタール以上で、精度は劣る。
 だが、農地開発のためのアマゾン開発などを容認する発言を繰り返し、パリ協定離脱を示唆した事で国際的な批判も浴びた大統領にとっては、アマゾンの森林伐採増加との報告は、国際社会に対する逆宣伝そのものだ。
 ボルソナロ大統領は、「6月のデータは昨年同月のデータと酷似している」「本当にデータ通りならアマゾンはもう丸裸のはず」などと、データの信憑性を疑う発言を行い、「まるでどこかの非政府団体の仕事のようだ」と批判した。
 一方、Inpeのリカルド・マギヌス・ガウヴァン所長は20日、「公的な場で批判すれば私が辞任すると思っているのだろうが、当研究所の調査は1970年代から始まっており、その内容は国際社会でも信頼を得ている」と反論。「Inpeの研究者は政府が指名した委員会が科学的な見地から選んでおり、政治的な理由が入る余地はない」とも明言した。
 同氏は、「リカルド・サレス環境相もInpeのデータの信憑性などを批判し、当研究所の仕事を民間企業に委託するかの発言をした事があるが、どういう了見かわからない」とも語った。
 ボルソナロ大統領は、Inpeのデータは関係大臣の了承を得た上で発表すべきだし、森林伐採は防ぐべきだがブラジルへの逆宣伝はすべきではないなどと繰り返したが、科学者達は21日に、Inpeの働きや信憑性を擁護し、政治的かつイデオロギーによる批判は不当との声明を発表した。