静岡県浜松市の鈴木康友市長と市職員ら4人が20日に来伯した。浜松市は来年の東京五輪・パラリンピックで、ブラジル選手団の事前合宿受け入れ地となっている関係で、鈴木市長らはブラジル五輪委員会などと選手受け入れの協定締結のため訪伯した。その後、サンパウロ市の静岡県人会を24日に訪問して会員との懇親会を行った際に取材した。
東京五輪・パラリンピックのブラジル選手団事前合宿受け入れ地に浜松市が選ばれたことについて、鈴木市長は「一過性の盛り上がりに済ませず、その後も日伯の交流を深めていきたい」との抱負をのべた。
原永門県人会会長は「必要な時は県人会を遠慮せず使ってほしい。この訪問を機に連携をより密にできれば」と申し出た。
同市長は「全国では労働環境や、習慣の違いによる近所とのトラブル、子供の教育など、外国人との共生に関する課題があり、その解決に重点を置いている。浜松では外国人の多様性や能力を活かし、課題解決だけでなく街の発展につなげている」と多文化共生の取り組みの進捗を説明した。
浜松市には、自動車産業が盛んなことから多くの外国人が働きに来ている。市町村別で全国最多、約9200人(2018年度)のブラジル人が生活し、日本語教室や外国人学習支援センターの設置、小学校への支援員派遣も進められ、全国でも多文化共生の進んだ町として知られている。
来年の東京五輪で浜松市は、ゴルフ、柔道、新体操、卓球、ボート、野球、ラグビーの7競技、パラリンピックは全競技のブラジル選手団を受け入れる予定。特にパラリンピックでは、練習会場の準備や選手のサポートを行うボランティアを現在募集中で、すでに約1500人が集まった。
浜松市からは寺田聖子市民部文化振興担当部長、山口貴弘市民部スポーツ振興課副主幹、石川エツオ・ブラジルタウンホストアドバイザーも列席。当地側は川崎エレナ副会長、ブラジル健康体操協会の川添敏江会長ら11人が参加した。
静岡市出身の川添さんは同協会の会員数を約1400人と紹介。市長は「大盛況ですね」と感心した様子。同協会の本部は浜松市にある。川崎副会長や山内みどりさんら4人の元県費留学生や研修生は「現在、婦人部創設を目指している」と流暢な日本語で説明した。
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静岡県人会は一昨年に創立60周年を迎え、原会長は約10年ぶりの県費留学生制度再開を川勝平太知事に直訴。昨年、再び日本へ留学生が送り出されることとなった。募集の際には、採用1人に対し約40人の応募があったとか。その中にはデカセギ子弟で、浜松市に生まれながら、現在ブラジルの大学で学ぶ人も。静岡県人会で行われた鈴木市長らとの懇親会で、川崎副会長は「かつての留学生の多くは日本移民の子弟だったが、今変化が起きている」と率直な感想を述べた。日伯交流を担う人材にも新しい波が来ているようだ。