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《イタイプ発電所》有利な合意をブラジル自ら破棄=パラグアイの政情不安に配慮=パラグアイ大統領は罷免を免れる

イタイプ発電所(Itaipu/Divulgação)

 ブラジルとパラグアイが、両国間の国境にあるイタイプ水力発電所が供給する電力の扱いに関する合意を破棄した。1、2日付ブラジル各紙・サイトが報じている。

 パラグアイの首都アスンシオンで1日、合意破棄を確認する文書の調印がなされた。これに伴い、両国は再び、電力の扱いに関する交渉を始める。
 今回破棄されたのは今年5月24日に結ばれた合意で、2019年から2022年にかけて、イタイプダムで発電される電力の扱いに関するものだった。
 パラグアイは昨年、イタイプからの電力を1717MWmed(メガワット平均)使用し、この内の898MWmed分は1MWh(メガワット時間)あたり43・8ドル、819MWmed分は1MWhあたり6ドルを払っていた。
 パラグアイは毎年、どれ位の電力を使うかを予想して申告し、申告分を超えた分はそのつど請求していた。追加請求してきた電力は、雨季などで発電量が増えた際の余剰電力から捻出される。余剰電力には、発電所建設の際にブラジルがパラグアイに貸した資金の返済コストは含まれていないため、パラグアイは安く電力を使うことが出来ていた。
 しかし、5月に結ばれた合意では、年間使用量に準ずる電力をそっくり申告しており、同国の負担が大きく増えていた。
 ブラジルとの合意内容は、パラグアイの公社、全国電力管理会社(ANDE)総裁のペドロ・フェレイラ氏が反意を唱えて7月24日に辞任した後に明らかにされた。7月29日には同国外相らも辞任し、7月31日に後任外相が指名されたが、それと並行して、野党がアブド・ベニテス大統領の罷免を求め始めた。
 合意破棄、再交渉の報が流れると、大統領罷免派の一部が罷免への賛成を取りやめたため、ベニテス大統領はひとまず罷免の危機を脱した。
 一旦合意に達した内容の破棄にブラジルが応じた理由は、ボルソナロ大統領が、同じ保守で、政治傾向の似ているベニテス大統領を思いやったからだと、ブラジルのマスコミは報じている。2日付フォーリャ紙は、「2007年にはブラジルのルーラ大統領(当時)が、政治傾向の似ているボリビアのモラレス大統領の国内事情に配慮し、あえてブラジルに不利な取り決めを承認した過去もある」と報じた。
 パラグアイでの政治的混乱は、ルイス・アルベルト・カスティリオーニ外相やウーゴ・カバジェロ駐伯大使の辞任にも発展。同国大統領府報道官が7月29日に明かしたところによると、イタイプダムのディレクター、アルベルト・アルデレーテ氏も辞任している。
 ブラジル外務省は、両国合意破棄の成立前に、「パラグアイのベニテス大統領が巻き込まれている同国内の政治的動きに、強い関心を持っている。パラグアイで発生し得るいかなる政治手続きも、同国の憲法に全面的に則っており、民主主義の大原則から外れないことを、ブラジルは信じている」との書面を出した。