「ついに『彼』までも離れてしまったか」。これが13日に、アレッシャンドレ・フロッタ下議が、所属の社会自由党(PSL)から追放処分を受けた際にコラム子が思ったことだ。そして同時にこうも思った。「ボルソナロ信者から離れるる人で一番やっかいなタイプはこういう人なんじゃないか」と▼別にフロッタ氏がPSLから追放されることで、ボルソナロ政権は何の痛手も被らない。そこのところは、ボルソナロ氏の大統領選でのコーディネーター役だったグスターヴォ・ベビアーノ氏や、陸軍との橋渡し役立ったカルロス・アルベルト・ドス・サントスクルス氏といった重要閣僚を失ったときとは比べ物にならない▼ただ、こと「対国民」に関して言えば、フロッタ氏がボルソナロ氏と袂を分かつ方がインパクトが大きいように思う。それは、かつては有名なポルノ男優だったフロッタ氏の方が閣僚よりも遥かに一般知名度があるから、ということもある。だが、それ以上に注目すべきは、フロッタ氏が「等身大のボルソナロ・ファン」を象徴していた側面があったことだ▼大統領選期間中、フロッタ氏のイメージは必ずしも良いものではなかった。反ボルソナロ派にとっては「愚かなボルソナロ支持者代表」として、格好の攻撃対象にもなっていた。「大体、シコ・ブアルキのような(音楽、文学の)才人が推す候補と、フロッタみたいな奴が推す候補のどちらがまともだと思うんだ」。フェルナンド・ハダジ氏との決選投票の際はそういうジョークも言われたほどだった▼だが、その反面、フロッタ氏は「政治への知識は薄く最近関心を持ったけど、世の中がおかしいと確かに目覚めたんだ」というタイプの国民の共感を得ることには成功した。それはある意味、2010年に国民からの最多得票で下議に当選したかつての無学のコメディアン、チリリッカ氏に近いかもしれない。良く言えば「政治家としての実力はないが、“社会をなんとかしたい”という純粋な気持ちなら自分たちに近いじゃないか」といった感じか。だからフロッタ氏も、激戦区のサンパウロ州支部で下議に当選することができたのだろう▼ただ、そんな彼が、ネット上で長い時間、「ブラジル政界を変える新たな伝説の男」として期待していたボルソナロ氏に失望し、批判を続けた上に大統領の党から追い出された。変わったのはフロッタ氏の方ではない。彼が批判し続けていたのは、政界に本当に必要な実務より極右思想家のイデオロギーに心酔したり、大事な要職に自分のイエスマンか縁故のある人物を採用しつづける大統領の態度だ。彼が理想とする政治家像は純粋なままだった▼そしてコラム子が気になるのは、ボルソナロ信者には彼のようなタイプが元来多いことだ。もちろん中には「大統領の言うことを信じ続けることこそ忠誠だ」とむきになるタイプも少なくはないだろう。だが、「フロッタ氏ほど疑いようのないと思われていた心酔ぶりを示していた人が“裏切られた”と思ったということは・・・」と、我に返る人も多いのではないだろうか▼加えて今回のPSLの処分で気になるのは「大統領に逆らうものは去れ」と言わんばかりの批判ご法度の権威主義的な党内の空気だ。この感じでいくと、既に大統領への批判も度々の、ジウマ元大統領を罷免に追い込んだヒロインとも称えられる弁護士、ジャナイーナ・パスコアルサンパウロ州議のような人がPSLを追われるのも時間の問題か。(陽)