ブラジル経済省のワルデリー・ロドリゲス財務特別局長が8月30日に、2020年の年間予算法プロジェクト(PLOA)と、2020~23年の多年度投資計画(PPA)を議会に提出した。8月30、31日付現地各紙・サイトが報じた。
PLOAは、来年度のインフレ率や経済成長率を想定した上で優先政策の必要額を算定したもの。PPAは、政権発足初年度に、2年目から次政権の初年度末までの4年単位の投資計画を明記したものだ。
政府支出の一部は「法定最低賃金の~倍」のように決められている事もあり、来年の法定最低賃金も月額1039レアルと発表された。この金額は、現行の998レアルに想定全国消費者物価指数(INPC)をかけたもので、インフレ率以上の増額は見送られる見通しだ。
予算には、公務員の人件費や年金の支払いなど、絶対に削れない「義務的支出」と、行政行為に必要な物品の購入、光熱費、インフラ(基幹構造)への投資、学生に支払う奨学金やパスポート発行その他の「裁量支出」がある。来年の裁量支出は891億6100万レアルと記されている。
政府の経済政策班は、「行政が必要最低限の活動を行うためには裁量支出に1千億レアルが必要」としている。
今年の「裁量支出」は1020億レアルの予定だったが、その後様々な削減が行われ、今は840億レアルまで縮小。現在も高等教育機関や研究機関の奨学金は支給停止寸前で、中央省庁で大停電が起きる可能性などが報じられている。各紙では「麻痺」や「停電」などの言葉を使い、「来年は政府の基本的活動さえも止まる危険性あり」と伝えている。
ワルデリー・ロドリゲス財務特別局長は、「ブラジルの問題は、税収が少ないことでも、支出を増やせないことでもなく、義務的支出の拡大が早すぎて、国民生活の質や経済効率性を高めるための投資が出来ないこと」だという。地元紙によると、来年の政府支出の94%は義務的支出で、裁量支出は6%に過ぎない。政府は義務的支出を何とか減らし、少しでも裁量支出に回せるよう目論んでいる。
また、提出された来年予算は、「人件費や社会保障費の支払いに国債を用いてはならない」という財政責任法の項目に抵触しないため、3670億レアル分が不足している。不足分には、各種恩給や人件費、失業保険、ボルサ・ファミリアの支払いに20年10月の選挙用の資金も含まれる。この分の追加融資を受けるためには議会の承認が必要だ。財政責任法を遵守できないと大統領罷免の理由にもなりうる。連邦政府は今年も同じ状況に陥り、2489億レアルの追加融資を受けている。
なお、「投資」に割り当てられる予算は190億レアルで、今年より29・3%少なく、最近10年間でも最低水準。対国民総生産(GDP)比では0・3%の低さだ。