各日系団体で縁の下の力持ちとして活躍する婦人部。トメアスー移住地でも同様に、トメアスー文化農業振興協会(ACTA、文協)とトメアスー総合農業共同組合(CAMTA)では、それぞれ婦人部が組織され活躍している。
「CAMTAの婦人部は組合員なので、文協より非日系人が多いんですよ」と教えてくれたのは、両団体の婦人部を掛け持ちするCAMTAの乙幡理奈部長(47、二世)。乙幡敬一アルベルト理事長の妻で、今年は夫婦で長を務めている。サンパウロ州バストス出身で、結婚してトメアスーに移住した。
CAMTAの婦人部は87年1月26日に創立し、イベントでの商品の販売の他に組合の隣りにある店で手作り製品を販売している。販売するのは、バナナチップ、ビスケットなどの食物が多い。
マラクジャ、クプアス―、タぺレバなど12種類の熱帯フルーツジュースも婦人部の手作り。「今年は初めてピタイヤとパイナップルのジュースも作りました」と新しい味の開発にも余念がない。これらは、盆踊りなどのイベントでも販売される。
そんな婦人部に所属するのは120人で、そのうち半分が日系人、残りの半分がブラジル人だ。今年は7人の役員のうち、初めて理奈さん以外は全員ブラジル人が選ばれた。理奈さんは「やっぱり考え方が違うので、責任もってやってもらうように非日系人に教えながらやっています」とその苦労を語る。
また、若いメンバーが少ないことも悩みの一つだ。今の会員は4、50代がメインで30代から下は全体の2割程度。「トメアスーに若い日系人自体が減っているので増えないですね」と厳しい表情を浮かべる。
課題もある中、90周年のための準備は着々と進行している。CAMTA婦人部は、13日に文協前でCAMTAのジャム、ピメンタ、シャーベットや、熱帯フルーツなどの地元の特産品、婦人部の手作り石鹸、手作りお菓子等を販売する。
また、80周年に一部の婦人部で始めた「Arte CAMTA」でも、アサイーの種でケータイのアクセサリーやネックレスなどを作り販売する予定だ。
今後の展望について理奈さんに聞くと「味噌作りや料理本を制作したい」と語るが、「婦人部長の任期は1人1年。もう少し延ばせばもっと色んな事ができると思うけど、今すぐには変わらないのよね。だから出来る限りのことをやりたい」と前向きな思いを語った。
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ACTAの婦人部(花輪志津子部長)は、昨年の眞子さまご来伯時の昼食会を行った際に食事を作り大きく貢献した。今回の取材に協力してくれたのは、婦人部の押切ルイーザ副部長(76、三世)、高木千草イボーニ副部長(60、二世)、久保田一美セリアさん。眞子さまが召し上がられた食事の裏話をたっぷりと語ってもらった。
「あの特別なデザートを考えたのは、眞子さまがいらっしゃる2日前だったのよ」と語ったのはセリアさん。初めはシンプルなデザートを考えていたが、「眞子さまの記念になるように」というアイデアが出た。そこで大急ぎで眞子さまのために特別な「パヴェ・ダ・プリンセーザ」を考案して作り、本番では眞子さまの席まで料理を持っていく大役を担った。
眞子さまの来訪が決まった際には、婦人部16人の役員を中心として、メニューや食器について話し合われた。「トメアスーの食材を使うように意識した」と言う特製メニューには、ジャンブーの佃煮、ペスカーダ・アマレロのムケッカなどを用意。コロニアらしい寿司、パルミット、焼きナス、赤かぶの酢漬け、エビフライなどの食事も。
最後に出されたパヴェ・ダ・プリンセーザ」は、花輪部長や押切さんの助言もあり、セリアさんは「お姫様に合うように繊細な味にしたの」。下にクプアスーのクリームを使い、その上にコンデンスミルク等で作ったクリームにクプアスーをほんの少しだけ加え匂いと酸味を緩和させた。
最も大変だったのがピタイヤ(ドラゴンフルーツ、赤色)のジャム。「ピタイヤは繊維がほとんどなくて、火にかけると溶けちゃう。その繊維を残すのに物凄く苦労した」と話す。このクプアスーの白とピタイヤの赤で日の丸を表現。カカオとカスターニャ・ド・パラーを乗せ、眞子さまのためだけの特別なデザートが完成した。
眞子さま来訪への準備で、セリアさんは日本人に対し「素晴らしい」と感じたエピソードがあった。眞子さま来訪の1週間ほど前からブラジリアから大使館から人員が派遣され、前日には昼食会の予行演習を行った。「台所から持ってくるのに何分かかるのかを計っていた。こうした努力があるから、日本は時間を守れるんだって分かったわ」としみじみと語る。
当日はセリアさんが眞子さまに料理を運んだが、「ムケッカを出す時に時間が経ちすぎてしまっていて、眞子さまに食べるか聞くように言われたの」。しかし眞子さまは「美味しいから全てください」と言い、ムケッカも全て召し上がった。さらにグラヴィオーラのジュースを2杯、アセロラのジュースも1杯飲み、日本政府側から「ブラジル滞在で一番食べていらっしゃる」と驚かれた。
さらに眞子さまのために、トイレに眞子さまの名前が入った刺繍入りタオルを置き、石鹸入れも新しいものを用意した。「刺繍入りのタオルを気に入られ、一つご所望されたので、ぜひ持っていってくださいとお願いした」と押切さんと高木さんも喜ぶ。眞子さまのトメアスー来訪が成功したのは、婦人部の力が大きかった。
90周年の式典後も、婦人部の腕によりをかけた料理を楽しむことができる。当日のメニューについて聞くと「ここの婦人部は豪華な美味しいものを作るので楽しみにしていてください」と頼もしい返事が返ってきた。(つづく、有馬亜季子記者)