【既報関連】8月14日にブラジル連邦議会で承認された職権乱用防止法の裁可、もしくは拒否権行使の期限(5日)が迫る中、ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)が法案中、何項目を拒否しそうか、ブラジル国内メディアの見解が分かれている。
3日付現地紙は「4項目は有力」と報じ、同日付ニュースサイトは「およそ20項目」との3日朝の大統領発言を紹介した。
「既存の政治勢力のように汚職にまみれていない。汚職と戦う」と主張し、当選したボルソナロ大統領だが、連邦議会には旧来の政治手法を引きずる勢力が多数おり、ラヴァ・ジャット作戦で捜査対象になった議員も多い。そんな〃すねに傷持つ〃議員たちが、右派、左派の違いを問わずに団結し、スピード承認してしまったのが職権乱用防止法だ。
「職権乱用を防ぐ」の建前で、検察や警察、司法の権限を制限する法案に、大統領の所属政党PSLは党を挙げて反対したが、承認を阻止できなかった。
政権最大の課題の社会保障制度改革案も上院審議が残っており、その後の税制改革も議会の助けがないと成立しない。
しかも、議会を牛耳るセントロン(中道派の政党の議員らの集まり)は、まるで脅しのように、大統領の意に反する案件の投票で300票超の賛成票を得るという結果を突きつけたこともある。
超人気判事だったセルジオ・モロ氏を法務大臣に大抜擢するなどしてつくり出した、クリーンなイメージも大事にしたい大統領にとって、職権乱用防止法の扱いは大きなジレンマだ。
「モロ法相は10項目の拒否を要請してきたが、その内9項目の拒否はほぼ確定」と、ボルソナロ大統領は2日の朝、語ったが、詳細は明らかにしなかった。不確定要素も多いが、「4項目の拒否は固い」と現地紙は報じるにとどめた。
それらは、第17項「逮捕者が暴れたり、逃走する恐れのないときに手錠をかけることを禁ずる」、第9項「『法的不調和の疑い』を理由に逮捕したり、釈放を拒んだりすることを禁ずる」、第13項「逮捕者、拘束者を暴力や脅迫などで辱めてはならない」、第43項「弁護士に認められた権利を制限する事を禁ずる」だ。9、13、43項は条文を拡大解釈されると、警察や検事、判事が逆に罪に問われる危険性が指摘されていた。
一方、同日付ニュースサイトは、「3日の朝、ボルソナロ大統領は、『拒否は20項目程度になるだろう。良い部分は残る』と語ったが、詳細は明らかにしなかった」と報じた。同大統領は「今日(3日)中にも発表できる可能性がある」とまで語ったが、午後5時の時点では詳細は明らかにされていない。