在聖日本国総領事館(野口泰総領事)は、「令和元年度外務大臣表彰伝達・祝賀式」を4日午後、総領事公邸にて執り行い、在聖総領事館管内の受賞者5氏に表彰を行った。受賞者の関係者や日系団体代表者ら約60人が出席し、受賞者を温かく祝福した。全伯では23個人・団体が受賞している。
在聖総領事館管内では、呉屋新城春美さん(66、沖縄県)、南利実さん(88、二世)、日下野良武さん(76、熊本県)、山下治さん(83、福井県)、マウリリオ・ビアジ・フィーリョさん(77)の5氏が受賞した。
伝達式は日伯両国国歌斉唱の後、野口総領事が受賞者の功績を紹介。5氏に表彰状、記念品を手渡し、「5氏は長年の尽力、誠実な姿勢により、日伯友好関係の拡大に輝かしい功績を残し、日系社会、ブラジル社会の発展に寄与した。今後も日伯両国関係の発展に一層活躍すると確信している」と祝辞を述べた。
文協前会長としてブラジル日本移民110周年関連の行事を多数実施、ブラジル沖縄県人会、ジャパン・ハウスの初期運営委員としても活躍した呉屋さんは「私は文協初の女性会長として文協60周年を迎え、懸命に活動してきた。2度の皇室ご来伯や、移民110周年に立ち会えたことは何事にも代えがたい出来事だった」と振り返った。
サンパウロ日伯援護協会の日伯友好病院院長を務めた南さんは「地方でポ語を話せない移住者に、下手な日本語でなんとか対応した際、患者が涙して喜んでくれ、使命感を持った。医者として当然のことをしてきただけで、このような名誉を授かると思ってなかった」と喜びを語った。
日下野さんはブラジル日本語センターで理事長を務め、日本語普及がしやすい体制作りを精力的に行っている。「夢は『日本文化圏人』を育てること」と言う。これは同氏の造語で「日本文化のファン」のこと。「非日系人への日本語普及活動を強化したい」との強い思いを持ち、「この夢を叶えるためには、日本の支援が必要。だから常に日本に呼びかけなければ」とさらなる意欲を見せた。
サンパウロ州サンミゲル・アルカンジョ市のコロニア・ピニャール地区で村作りに尽力。同地文協会長も務めた山下さんは「移住10年目にやっと電気が通った。村が果物栽培で発展するまでは、本当に貧しく大変な時期もあった。表彰は身に余る名誉だ」としみじみ苦労をにじませた。
フィーリョさんは、現在では南米最大の農業関連イベントとなった「アグリショウ(Agrishow)」の初開催から携わり、発展に貢献。また自身が社長を務めるマウヒザグループでは、サトウキビ生産量を大きく拡大させ、日系人農家の生活向上に寄与、ブラジル農業にも大きな役割を果たしてきた。
外務大臣表彰(河野太郎外相)は、国際関係の様々な分野で活躍し、日本と諸外国との友好親善関係増進に大きく貢献した個人及び団体の功績をたたえ、その活動に対する理解と支持を日本国民に呼びかけるもの。
式には受賞者関係者らを含め、ブラジル日本文化福祉協会の石川レナト会長、ブラジル日本都道府県人会連合会の山田康夫会長、援協の税田清七副会長、日伯文化連盟の吉田エドアルド理事長も出席した。
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4日の「令和元年度外務大臣表彰伝達・祝賀式」で受賞者の日下野さんは、「公園で出会った非日系の人に『日本語の中に寛容、遠慮、思いやりなど素晴らしい日本文化が詰まっている。だから、子どもに日本語を学ばせている』と聞き、涙が出そうになった。今後も日本文化普及に尽力したい」との逸話を披露した。近年では、地方の日本語学校生徒の大半は非日系人で、彼らは日本文化の魅力を発信するにあたり独自の説得力を持っていると分析する。日本語普及を通して、今後も心強い日伯の懸け橋となってくれそうだ。