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《ブラジル》職権乱用防止法、合計36項目に拒否権行使=「簡単ではなかった」とボルソナロ大統領=議会はすでに反発の動き

フェイスブック生配信動画で拒否権行使を国民に伝えるボルソナロ大統領(右)とモロ法相(facebookのボルソナロ大統領ファンページより)

 【既報関連】ブラジルのボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)は5日、下院が8月に承認した職権乱用防止法を裁可したが、それに際し、19の条文に記載された合計36の項目に拒否権を行使した。6日付現地各紙が報じている。
 公務員の職権乱用を防ぐことを目的とした同法は第44条まである。基本的に、犯罪捜査の行き過ぎを防ぐため、警察、検事、裁判官の権利を制限し、禁固刑まで含む罰則を定めたものだ。
 ただし、「捜査の行き過ぎを防ぐ」は建前で、一般的には「汚職疑惑議員たちが捜査権力を弱めるために成立させた」と評価されている。
 セルジオ・モロ法相も大幅な拒否権行使を要請していたが、ラヴァ・ジャット作戦で捜査対象になったこともあるロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)は、「議会の立場や機能を尊重して欲しい。大統領の拒否権行使を議会が無効化することもあり得る」と語るなど、大統領の出方が注目されていた。
 拒否された項目には、「逮捕者が逃走する恐れのないときは手錠をかけてはならない」、「法的不調和を理由に逮捕したり、逮捕者の釈放を拒んだりしてはならない」、「逮捕者を辱めてはならない」、「弁護士の権利を制限してはならない」などがある。
 その他に、「職権乱用防止法違反者は公職を失う」「違法な手段で証拠を集めてはならない」、「おとり捜査の禁止」、「正当理由のない捜査禁止」、「調書閲覧拒否の禁止」も拒否された。
 「逮捕者を辱めてはならない」や「正当な理由のない捜査禁止」などは成立して然るべきとの印象を与えるが、警察、検察を含む司法関係者は、「汚職容疑者の弁護士らが拡大解釈し、釈放、無罪、捜査の合法性の否定につながる」とし、拒否を求めていた。
 5日にインターネット配信で拒否権行使を国民に告げた大統領は、「拒否は簡単ではなかった」と語り、モロ法相も、「拒否権は議会にも配慮しながら行使された。議員たちも理解してくれるはず」と語った。
 「大統領は国民の声を聴いた。拒否権行使は国民の支持を得る」との声も議員からは出たが、「拒否項目が多すぎる」「全ての拒否を認めるのは無理」との声も出た。これら相反する意見は全て、大統領所属のPSLの議員たちのものだ。
 議会は定数の過半数以上の票で拒否権を無効化できる。マイア議長は、先月から既に、“拒否の拒否”に向けて議会内をまとめている。
 超党派のセントロンも法案推進派で、リーダー格のパウリーニョ・ダ・フォルサ下議(連帯)は「全ての拒否を無効化する」と語っている。
 また、ダヴィ・アルコルンブレ上院議長(DEM)は、「議会を通った法案を大統領が裁可するか拒否するかは、政治の場なら当然起こり得る判断だ。民主主義のあり方としては普通」と語るにとどめた。