ボルソナロ大統領は5日、次期連邦検察庁長官にアウグスト・アラス氏を指名した。検察庁長官は、検察庁の内部選挙で選ばれた3人の候補(トリプリセ)から選出するという伝統があり、セルジオ・モロ法相もそれに従うよう大統領に説得を試みていたが、アラス氏はこの3人の候補に入っていなかった。大統領が伝統を無視する形で次期長官を指名したことは、内外で強い反発を招いている。6日付現地紙が報じている。
今回のアラス氏指名には、方々から批判の声が出ている。それは同氏が、16年ぶり(長官の任期は2年)にトリプリセを無視して選ばれたからだ。このことに関しては、全国判事協会(ANPR)も「検察庁の意向が反映されなかった」として抗議している。
アラス氏は4月にトリプリセには反対の立場を表明し、単独で大統領との接触を試みた。トリプリセで5位に入ったヴラジミル・アラス地域検事は同士のいとこだ。
同氏が検察庁内で反対される最大の理由のひとつは、ラヴァ・ジャット(LJ)作戦に懐疑的な発言をかねてから行っていたことだ。ボルソナロ氏がアラス氏指名を考えていることは、7月下旬に報じられていた。だが、モロ法相はアラス氏が反LJ派であることを理由に、ボルソナロ氏に指名を取り下げるよう説得しているとマスコミに認めていた。
ボルソナロ氏はアラス氏を、アルベルト・フラガ元下議(民主党・DEM)の紹介で知ったという。同氏が気に入った理由は、同性愛嫌悪者であることと、連邦政府が推進したがっている南北鉄道建設のための入札支持者であることだ。
だが、今回の決定には、熱心なボルソナロ支持者からも強い反発が起きた。それは、アラス氏が左翼思想の持ち主で、過去に行ったチェ・ゲバラを信奉する発言や、ルーラ元大統領のスローガンを口走るなどの行動が公になっていたためだ。これらの言動は、ボルソナロ氏を支持する極右主義者をいらだたせていた。
このため、ボルソナロ氏支持者の間では5日夜、「モロ2022」と「2022年の大統領選でモロ氏を支持する」とのハッシュタグでボルソナロ氏に抗議する動きもあった。
他方、4日には、検察庁特捜局(PGR)内でLJ作戦を担当していた検察官6人が、ラケル・ドッジ現長官の方針に反対して集団辞職する事態も起きた。それは同長官が3日に、OAS社元社長のレオ・ピニェイロ氏の報奨付供述の内、ジアス・トフォリ最高裁長官の兄弟の1人とロドリゴ・マイア下院議長に関する供述とそれにまつわる捜査をお蔵入りさせるよう、最高裁に要請したからだ。
なお、アラス氏が正式に任命されるには、上院憲政委員会での試問(サバチーナ)後、委員会と本会議で承認される必要がある。