【既報関連】2017年5月に上院で承認されて以来、2年以上も下院承認が待たれていた公職者特権(フォーロ・プリビレジアード)関連の憲法改正案(PEC10/2013)の内容を変更しようとする動きが下院で活発化していると、10日付現地紙が報じた。
17年に上院を通過した際は、「正副大統領、上下両院議長、最高裁長官の5人には最高裁のみで扱うという公職者特権を認めるが、連邦議員や大臣、知事、最高裁から地裁に至る判事、大使、軍高官、検事などの場合は、特定の裁判所で扱う公職者特権を、任期中に犯し、職責に関連する犯罪のみに限定して認定。それ以外の犯罪は通常の市民同様、地裁で扱う」というものだった。
しかし、下院議員たちは「一審裁担当判事が公職者に対する逮捕令状、口座情報や通話情報の開示許可、家宅捜索令状を出すことを禁じる」と、PEC10/13を変更しようとしている。
この動きをリードしているのは、法学者でもあるルイス・ゴメス下議(PSB)で、既にロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)も承認している。議員たちの提案が通れば、公職者特権の利益を受ける範囲も、利益の大きさも拡大してしまう。
判事たちから見れば、逮捕令状、家宅捜索令状、情報開示令などは、「犯罪行為の隠匿を防ぐ予防的措置」だが、議員たちは、「司法の暴走」と批判している。
「リオ州のラヴァ・ジャット作戦(LJ)担当判事マルセロ・ブレッタス氏や、モロ法相の後任でクリチーバのLJ担当判事ルイス・ボナ氏らの一審裁担当判事に、逮捕令状、職務停止命令などを出させないように、議員たちが動いた」と現地紙は分析している。
ブラジル連邦議会は、警察や検事、判事の力を弱め、罪に問うことも出来る職権乱用防止法を8月14日に成立させた。ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)は9月5日に一部を拒否しつつ同法を裁可したが、議会は“拒否の拒否”(定数の半数以上で拒否権を無効化できる)を行う構えだ。PEC10/13を議員に有利に変更しようとする動きもこれに付随している。
下院の政党リーダーたちの間では、「“拒否の拒否”に成功したら、10月にはPEC10/13を下院本会議の議題に上げる」ことで合意が出来ている。マイア議長は8月20日に、こうした道筋をゴメス下議らに示していた。
昨年行われた総選挙で当選した議員たちの任期は今年の2月からだが、2月以降、「PEC10/13を議題に上げるべき」との要請は14回も出たという。
ゴメス下議は、「『政治的な思惑を持った判事たちに、逮捕や家宅捜索など、厳しすぎる令状を出されてはたまらない』と全ての政治家が思っている」とし、連邦議会レベルの政治家だけでなく、市長や市議会議員までを“PEC10/13の傘の下”に入れようと考えている。
10日夜の時点では、マイア下院議長は同件に関する現地紙の質問には返答していなかった。