【既報関連】ボルソナロ大統領の次男カルロス氏が9日に発した「民主主義では、ブラジルが望む速さでの変革は起こらない」という、独裁政権を擁護するかのような発言は、連邦政府、連邦議会、連邦検察庁、最高裁にまで波紋を投げかけている。11日付現地紙が報じている。
カルロス氏のツイートが9日のうちにブラジル弁護士会のフェリペ・クルス会長から批判を浴びたことは昨日付本紙でも報じた。カルロス氏はこうした批判に関し、「急いで改革を行いたい人には民主主義では時間がかかるといっただけであり、軍事政権を礼賛したわけじゃない」と反論し、「悪意に取ったマスコミが拡散しているのだ」と批判した。
だが、その余波は本人が思っていた以上に大きなものとなった。
10日、ヘルニア手術で入院中のボルソナロ氏に代わって大統領代行を務めているモウロン副大統領は、「民主主義は西洋文明の柱だ」と語り、「立法府や司法府との対話を行うことで変革を速くすることは可能だ」と三権分立の重要さを説いた。
また、ダヴィ・アルコルンブレ上院議長は「民主主義を貶めるような発言を、私は軽蔑する」と発言。ロドリゴ・マイア下院議長も「民主主義国家にはそぐわない発言だ。民主主義システムがなければベネズエラのような国になってしまう」と揶揄し、「そういう発言をすると、国内の企業活動も、国外からの投資も不安定になる。代償は貧しい国になるだけだ」と批判した。
一方、ラケル・ドッジ検察庁長官も「我々、検察は、民主主義と自由をもって暴力や抑圧と戦い続けるのが使命だ」との声明を発表。さらに「SNSのような顔の見えないメディアでは人は他人に対して攻撃的になり、建設的でなくなるものだ」とも発言した。カルロス氏は父のネット分野の担当者で、大統領の支持者に影響力があることでも有名だ。
エスタード紙によれば、最高裁内部でも同発言に対して批判的な意見が相次いでおり、「ただでさえ弱まっている議会や最高裁との関係が、さらに弱くなる」などと語る判事もいたという。
この他、カルロス氏と対立して連邦政府を追われたカルロス・アルベルト・ドス・サントス・クルス前大統領府秘書室長官も、「不安定かつ幼稚な発言」と厳しい一言。2022年の大統領選でのボルソナロ大統領との対決が注目されるジョアン・ドリア・サンパウロ州知事は、「民主主義のあるところにしか政治も経済も生まれない」とし、同じく有力大統領候補のシロ・ゴメス氏も、「大統領の価値観を代弁しているにすぎない」と攻撃した。