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《ブラジル》新税導入問題で、国税庁と政府の対立浮き彫り=議会も選挙視野に抵抗ポーズ

国税庁長官の座を追われたマルコス・シントラ氏(Jose Cruz/Ag. Brasil)

 【既報関連】ブラジル政府の税制改革案が正式に議会に提出される前に、ボルソナロ政権の大物経済スタッフ、マルコス・シントラ国税庁長官が11日に解任された。12日付現地各紙・サイトが報じている。

 国税庁は新政権発足に伴う行政改革で経済省所轄の特別局扱いになっており、財政改革実現のためにも重要な機関だ。ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)の命を受けたパウロ・ゲデス経済相が、その長官のシントラ氏を解任した。
 引き金となったのは、旧金融取引暫定納付金(CPMF、通称小切手税)に類似の新税の導入(各紙は「CPMFの復活」と報道)に関する意見の相違だ。
 CPMFは口座振込みや現金引き落とし、口座間決済時などに自動的徴収される税金で、2007年に廃止された。シントラ氏は、このCPMF復活の旗振り役とされていた。
 官僚の論理では、財政改革のために徴税システム簡素化を図るなら、財政健全化のためにも別の財源からの税収確保が不可欠だ。だが、10年以上前に廃止された税復活という、国民受けの悪い政策を率先して行おうとしているとの印象を持たれたくない政府とは、論理や物事の進め方が噛み合わなかった。
 地元紙は、「国税庁の高官たちは政府の干渉に嫌気がさし、辞任をちらつかせていた」とし、国税庁幹部と政府の対立の存在を報じている。大物議員や最高裁判事、連邦会計検査院からも、ゲデス経済相に対し、シントラ切りの働きかけがあったようだ。
 CPMF推進派の国税庁マルセロ・シウヴァ局長補佐が10日に、具体的な税率まで挙げ、「政府の税制改革案にはCPMF復活が含まれる」と発言したことも、政界内の反感を一気に高めた。
 マイア議長は10日の夜、ゲデス経済相と会談し、「反対姿勢を公にする」と伝えた。マイア議長の動きの裏には、大物議員らによる「反対しないなら、議会審議ストップ」との脅しもあったという。
 個人的には新税導入の可能性を否定したくないゲデス経済相は、シントラ氏解任を機に、国税庁人事の再編成を行う予定だ。再編成のアイデアとして、徴税部門と監査部門を分けることが検討されている。
 シントラ氏の解任や、ボルソナロ大統領が11日にCPMF復活や増税を否定したこともあり、政府が近日中に出す予定の税制改革案では、CPMF復活を前面に押し出すことはないはずだ。
 税制改革案立案にむけた政府や議会、官僚間の調整役には、国税庁と同様に経済省所轄の社会保障労働特別局のロジェリオ・マリーニョ局長が担ぎ出される見通しだ。同氏は17年成立の改正労働法の報告官を務め、現在は社会保障改革の上院承認に向けた調整を行っている。