【既報関連】ブラジルではテメル政権期の2016年に、「政府支出は前年予算にインフレ率をかけた以上に上げてはならない」と規定する歳出上限法が成立した。だが、公務員給与などの義務的支出は、2016年~20年の間に2662億レアルも増え、上限法で決められた許容額の2300億レを上回ってしまう情勢だと、17日付地元紙が報じた。
2662億レアルは、生活保護政策(ボルサ・ファミリア)のほぼ9年分に当たる。また。来年度予算に占める義務的支出は国家歳出の93%に達しており、インフラ設備や教育、医療関係への投資などに使える裁量支出は7%以下でしかない。
上限法に基づけば、裁量支出も毎年インフレ分までは増額してもよいにも関わらず、16年から20年までに359億レアル減少した。
これに対し、16年~20年の公務員給与や退職公務員への年金支払い額は、2578億7千万レアルから3366億2千万レアルへと、787億5千万レアル増えた。
16年度の国家歳出に占める人件費の割合は20・64%だったが、20年は22・75%に増大。国内総生産(GDP)に対する比率で見ても、国家公務員の人件費は4・1%から4・5%に増えた。
この状況を改善するための方策の一つである社会保障制度改革はようやく上院審議にかかるところだが、政府は一方で、国家公務員の雇用保障にも手をつけようとしている。これは、解雇簡易化やワークシェアリング、減給の可能性もゼロではないとするもので、経済政策班は政府案立案の最終段階に入った。
ブラジルの地元紙は、「政府が上限法を守るため、公務員給与を減らすべきか」という紙上ディベートを掲載した。
サンパウロ総合大学経済学修士で賛成派のギリェルメ・チノコ氏は、「緊急の削減は必要ないが、人件費が拡大し続ける構造は改革するべき。さらには、今定められている国家公務員の給与上限(月額3万9293・32レアル)をすぐにちゃんと守らせるべき。エリート官僚の給与調整は、景気が戻るまでインフレ率以下にするべき」とした。
一方、ブラジリア大学経済学部助教授で反対派のジョゼ・ルイス・オレイロ氏は、「公務員の給与削減は景気を悪化させるだけ。不況期の2015年は公共投資を35%削減したため、景気が悪化した。投資削減はその後も続き、景気は悪くなった。公務員給与を減らせば消費に回る金が減る。中小自治体の経済は公務員が消費することで回っている、税収が減れば、国家の負債も増えてしまう」との意見だ。
国家公務員の給与や保障に手を付ける案はロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)からも支持を得ているが、国家公務員のワークシェアリング(労働時間を減らし、給与も減らすこと)に関しては、最高裁が反対の立場だ。