【既報関連】今月初旬にブラジル連邦下院が承認した、汚職に極めて甘い内容を含んだ法案(PL5029/19)が、17日に連邦上院で大幅に修正された。同法案の下院での差し戻し審議は18日に行われ、違反に甘い項目が一部復活した。上下両院のやりとりはさながらテニスのラリーのようで、あとは大統領の裁可待ちだが、ボルソナロ大統領は再度、“あっちをたてればこっちが立たず”の立場に立たされたことになる。18、19日付現地各紙・サイトが報じた。
17日に上院を通過した法案は、下院が承認した、選挙資金管理を緩くして、汚職の余地を広げる内容を一切削ったものだった。18日朝の時点では、「下院が上院の忠告を聞いて、そのまま再承認するか、国民を敵に回してでも、不正の余地を残した内容に修正するか」に注目が集まっていた。同日夜の下院採決で承認されたのは、上院で却下された内容を一部復活させたものだった。投票結果は賛成252、反対150だった。
汚職に甘い項目の復活に賛成したのは、進歩党(PP)、民主運動(MDB)、労働者党(PT)、自由党(PL)、社会民主党(PSD)、ブラジル社会党(PSB)、レプブリカノス(旧PRB、ブラジル共和党)、民主党(DEM)、民主労働党(PDT)、連帯、キリスト教社会党(PSC)、共産党(PCdoB)など12政党で、反対したのは、社会自由党(PSL)、民主社会党(PSDB)、ポデモス、自由と社会党(PSOL)、シダダニア、ノヴォ、緑の党(PV)、国家動員党(PMN)、持続ネットなどの9政党だった。
下院が復活させた項目には、「党事務所の建設費や改装費、不動産購入費にも助成金の使用を認める」、「監査役、弁護士雇用費は選挙費用上限の対象外」、「政見放送以外にも、助成金を使ってTVやラジオのCM、ネット広告を打てる」、「個人献金上限の拡大」などから、フィッシャ・リンパ法により立候補出来ないはずの政治家の出馬条件を緩くするものまで含まれている。
下院での復活が断念された項目には、「選挙費用の報告にはあらゆる決算システムの使用を認める」、「政党による公金不正使用の罪が成立するには、被疑者が犯罪性を認識しており、故意にやったことが証明されなくてはならない」、「選挙資金法違反に問われた被疑者は、判決の日まで会計報告の内容を変更できる」、「会計報告期限を8カ月遅らせる」、「汚職で告発された党員や、直接または間接的に政党に益すると見られる疑惑については、公金で弁護士を雇ってもよい」などがある。
同法案は今後、ボルソナロ大統領の裁可待ちになる。裁可の期限は15営業日以内(10月9日前後)だが、来年の選挙予定日(10月4日)の1年前までに裁可、発効とならないと来年の選挙には適用出来ないため、大統領はその前に判断すると見られている。