ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》汚職捜査に大きな打撃=「大統領の拒否」を拒否=33項目中18項目が復活=検事、判事に禁固刑の可能性

《ブラジル》汚職捜査に大きな打撃=「大統領の拒否」を拒否=33項目中18項目が復活=検事、判事に禁固刑の可能性

大統領の行使した拒否権を否定した両院議会総会(Fabio Rodrigues Pozzebom/Ag. Brasil)

 【既報関連】8月に議会が承認した職権乱用防止法は、ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)が部分的に拒否権を行使した上で裁可した。しかし、24日に開かれた両院議員総会で、大統領が拒否した項目33の内、18項目が復活したと、24、25日付伯字各紙・サイトが報じた。

 職権乱用防止法は、「警察、司法、捜査当局の行き過ぎを防ぐ」との名目で制定されたが、事実上は、「汚職摘発捜査の標的にされた政治家からの反撃」という性格を多分に帯びたものだ。
 社会保障制度改革成立のために議会と良好な関係を築きたいが、「汚職は容赦しない」との選挙戦での主張との整合性を保たなければならない大統領は、部分的拒否という道を選んだ。だが、議会は拒否された項目の半分以上を復活させた。
 残るは大統領の公布宣言(プロムルガソン)だけだが、48時間以内に公布を行わない場合、その任は上院議長が負う。
 議会が復活させた項目には、「法に反して、被疑者の自由を奪うような命令を出したり、拘束された被疑者に本来出されるべき予備拘留措置、人身保護令を出さなかったりした場合は、1年~4年の禁固刑」や、「暴力や強い威嚇で拘留者を辱めたり、被疑者が不利になる証拠を採取する目的で、被疑者の抵抗能力を制限したりしたら最大4年の禁固刑」、「身柄を拘束する際、自分の身分を明かさなかったり、偽ったりしたら最大2年の禁固刑」、「正当な理由なしに、被拘束者のインタビューや弁護士接見を妨げたら最大2年の禁固刑」、「弁護士の事務所に強制的に立ち入ったり、弁護士と依頼人の間の会話を盗聴してはならない」、「黙秘権行使を宣言した被疑者への取調べに固執してはならず、弁護士の同席を要求した場合に、弁護士抜きでの取調べに固執してもいけない」、「被疑者や弁護士が訴訟関連資料に目を通すことを拒否してはならない」などがある。
 また、「逮捕者が抵抗したり、逃亡したりする恐れのない時に手錠をかけてはいけない」、「現行犯逮捕するために、被疑者に犯罪を犯すように仕向ける、おとり捜査を行ってはならない」などに対する拒否は維持されたため、手錠の使用制限はなくなり、おとり捜査も許可される。

社会保障改革より、保身が優先?

 本来、今週は社会保障制度改革のための憲法改正案(PEC)の上院での初回採決が予定されていたのに、19日に上院政府リーダー、ベゼーラ・コエーリョ上議(民主運動・MDB)と息子の下議に対し、議会内も含む形の家宅捜索が行われたことに議員たちが憤慨。来週の予定だった職権乱用防止法の審議、採決が急きょ前倒しされ、社会保障制度改革は来週に回された。
 社会保障制度改革案の歳出削減効果は、政府が2月に提出した時点では1兆レアル規模だったが、審議過程でその額は8700億レアル程度に落ちている。経済政策班は、採決までの時間が伸びたことで改革内容が変更される可能性が出てこないかと不安に思っている。