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ボルソナロが夢見る国際保守ネットワークに暗雲か

24日のトランプ大統領とボルソナロ大統領(Alan Santos/PR)

 24日の国連総会での演説を、ほぼ「極右大統領としてのプロパガンダ」に終始したボルソナロ大統領。国際舞台が期待していた「アマゾン森林保護対策」に関しては欧米諸国の期待に応えるどころか神経を逆なでしていたようにも見えた。だが「自分の政治ポリシーのアピールの場」にすることしか考えていないようにコラム子には見えたので、その意味では「本人的には」成功だったのかもしれない▼「自分と波長の合う、保守派の政治リーダーたちの仲間入りをできればそれでよい」。ボルソナロ氏本人はそう考えているのかもしれない。たしかに同氏が昨年10月に大統領選で当選したのは、国際的に台頭しつつあった極右の波に後押しされたことも否めなかった。だが、それから約1年経った現在、世界の極右、もしくは保守系の政治リーダーに逆風が吹きはじめている▼それは、アルゼンチンでの大統領予備選からはじまった。ボルソナロ氏が大統領候補の頃から賞賛を惜しまなかった企業家から転じて大統領に上り詰めたマウリシオ・マクリ氏が、親ルーラ、ジウマ派でも有名だったクリスチーナ・キルチネル元大統領の息のかかったアルベルト・フェルナンデス氏に大差で敗戦。8月には債務返済延期を宣言したことで10月の本選での当選は不可能と見られている▼続いてイタリアでは、欧州きっての極右政治家、マッテオ・サルヴィーニ氏が、同国の連立与党を解消して副首相を辞任。議会総選挙での首相の座を狙ったが、それを恐れた左派政党二つががコンテ首相を中心に内閣を再編成。サルヴィーニ氏は国政を失った▼さらに9月には、ボルソナロ氏が米国のトランプ大統領と並んで心酔するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、議会選挙で所属政党「ビクード」が対立党「青と白」に僅差で敗れて第二党になる事態が起きた。現状で同氏は、まだ首相としての連立政権を組むことが可能ではあるが、6週間の期間以内に過半数の最大与党が組めない場合は、首相の優先権が「青と白」に移ることが約束されている。「青と白」は「ビクード」との連立条件を「ネタニヤフ氏退陣」にしているため難航は必至。10年以上続いた政権も瀕死の危機にある▼そして24日、米国の下院がトランプ大統領の罷免審理を受け付ける宣言を行なった。それはトランプ氏が、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、ライバルの民主党の大統領候補・ジョー・バイデン氏の息子に関する捜査を強要した疑いが持たれたためだ。しかもそれはウクライナに対しての軍事協力費が交換条件にされた疑いがあり、すでに両大統領間の電話の会話内容も公開されている。仮に罷免を免れても、このスキャンダルのダメージでトランプ氏が来年の大統領選再選はかなり苦しむことが予想される▼さらにイギリスでは「英国のトランプ」の異名も取るボリス・ジョンソン首相が懸案のEU離脱を実行すべく、反対勢力の議会を5週間閉鎖したが23日に最高裁で満場一致で「違憲」と判断された。これでEU離脱が困難になった上に、議会はジョンソン氏の退陣を叫び始めている▼まだ流動的な状況ではあるが、大統領当選時にボルソナロ氏が思い描いていたであろう国際的な極右、保守ネットワークを築き上げるのはかなり難しい状況になっているのは確かだ。(陽)