2014年初めから2018年末までの5年間で、世界の工業生産は約10%増えたが、ブラジルは逆に15%減少した。そのため、ブラジルは世界の工業生産ランキングトップ10から転落する可能性があると、1日付現地紙が報じた。
専門家たちは、ブラジル工業の低迷の理由として、2015~16年の景気後退や、「隣国アルゼンチンの経済危機に伴う同国への輸出減少」、「今年1月にミナス州で発生したブルマジーニョ鉱滓ダム決壊事故」、「昨年5月に発生した大規模トラックスト」、「内需の低迷」などを挙げている。
ブラジルの工業生産高は、国内総生産(GDP)の11%を占めている。工業生産は大型不況の始まった2014年から16年にかけて前年比減を続けており、17~18年に若干持ち直したものの、不況前の水準には戻っていない。関係者たちは、世界経済の低調を受け、今年は3年ぶりに前年比減となる可能性も指摘している。
世界の工業生産データを集めているブルー・ライン・アセット(サンパウロ市本社)所属エコノミスト、ラウラ・カルプスカ氏によると、14年から今まで、世界の総工業生産高は8%増えたが、ラテン・アメリカは4%減少した。ラテン・アメリカ地域の中でも生産減が著しいのがブラジルだという。
産業開発研究院(Iedi)所属エコノミストのラファエル・カジニン氏も、「極端な経済危機にあるアルゼンチン、ベネズエラを除くと、ブラジルはラテン・アメリカ米諸国の中でも工業の落ち込みが酷い国の一つ」と語る。
カジニン氏は、複雑な税制や設備投資の不足などもブラジル工業の国際競争力を下げる要因だとし、「今年のブラジル工業が前年比マイナスになる可能性は、ますます高まっている」とも語る。
また、エコノミストで元ブラジル中銀総裁のアフォンソ・セルソ・パストーレ氏は、「ブラジル工業界を形容するのに、“陥没”以外の適切な言葉が見つからない」とした。
同氏は「ブラジルと世界の工業界は、2012年までは同じ方向を向いて進んでいた。ただし、ブラジルは13年に落ち始めてから、ほとんど回復していないが、その間に世界全体の工業生産は増え続けている。ブラジルは多くの企業が政府の保護政策に甘え、国営の社会経済開発銀行(BNDES)からの融資を受け続けることで、国際的な競争力を高めるための設備投資などを忘れてしまった」と手厳しい。
リオ連邦大学教授で工業経済が専門のダヴィ・クフェル氏も、「ブラジル工業の国際競争力が低い理由は、複合的かつ構造的で、短期での解決は難しい。低調な経済も、工業の活性化を妨げている」と分析した。
クフェル氏は、これまでの政権が取ってきた、分野別に国内ナンバーワン企業を作ったり、企業から社会保障費を実質減額(デゾネラソン)したりといった政策は、一時的な後押しでしかなく、本質的な経営体力や世界市場で他の国際企業に伍していけるような競争力をつけさせる結果にはならなかったとしている。