ブラジル連邦議会の上院は1日、社会保障制度改革の憲法改正案の基本文書(texto-base)を賛成56票、反対19票で承認した。修正動議(destaque)の審議も継続して行われ、一部は否決されたが、残りは翌2日に持ち越された。1、2日付現地各紙・サイトが報じている。
下院で2度の承認を得た際の削減効果は「10年で9330億レアル」だった。上院憲政委員会(CCJ)の報告官、タッソ・ジェレイサッチ上議(民主社会党・PSDB)が8月末に提出した意見書の段階で、8760億レアルに落ちていた。今回さらに8千億レアルにまで縮小された。
1日はまず、上院CCJ(委員長シモーネ・タベ上議)での採決が行われ、17対9ですんなり承認。上院本会議での審議、採決に移り、基本文書も順調に承認された。だが、審議時間が夜半となり、退場する議員が続出。賛否の議員比率が変わり、アボノ・サラリアルの支給条件を厳しくしていた部分を削る修正動議が通ってしまった。
アボノ・サラリアルとは、正規雇用で働いていて、月収が法定最低賃金の2倍(現状は約2千レアル)を超えない労働者に対して政府が支払っていたボーナスだ。
改革案では、「月収2最賃以下の労働者が受け取れる」とした現行制度を、「月収1・4最賃以下」と厳しくする内容が盛り込まれていた。
大票田である貧困層の有権者に甘い顔をしたい議員たちは、下院でも修正動議を出して取り除こうとしていたが、その時は失敗に終わっていた。
しかし、上院が今回、この内容を取り除いた。そのため、現在の削減効果は「10年で約8千億レ」になった。2月に政府が社会保障制度改革案を提出した際の削減規模は約1兆2千億レアルだから、その分、改革効果が小さくなっている。
上院での一回目の採決は本来、先週行われる予定だったので、承認速度も政府の思い通りには進んでいない。先々週、連邦警察が上院の政府リーダー、フェルナンド・ベゼーラ・コエーリョ上議(民主運動・MDB)とその息子の下議に対する家宅捜索を行ったことで、議員たちが憤慨。職権乱用防止法に対し、大統領が行った拒否を再度拒否する採決を急きょ前倒ししたので、社会保障制度改革案の採決は今週に延期されていた。
ダヴィ・アルコルンブレ上院議長(民主党・DEM)は当初、2回目の採決を10月10日までに行うとしていたが、今は「早くても15日」との声が大勢だ。
承認の翌日、ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)は支持者たちに「(国民に痛みを強いる)社会保障制度改革は必要なんだ。やらないと2年で財政は破綻してしまう。本意ではないが、仕方ない」と語った。
改革案は2度目の上院承認が終わらないと正式に裁可できない。今回、年金改革の削減効果額が減った分だけ、次の年金改革を短い年数のうちに行う必要がでてくる。