ブラジル連邦政府は3日、犯罪防止法案(Pacote Anticrime)成立機運を高めるためのキャンペーンを開始した。3、4日付現地各紙、サイトが報じた。
ボルソナロ大統領(社会自由党・PSL)は当選後、人気判事だったセルジオ・モロ氏を法務大臣に抜擢。モロ法相が中心となって立案した犯罪防止法は2月に議会に提出されたが、社会保障制度改革の審議が優先されていたこともあり、犯罪防止法案は採決の目処が立っていない。議会はその間、汚職に甘い職権乱用防止法を通し、来年の地方選のルールを定めた法案でも汚職に甘い項目を承認した。
政府はそんな状況を変えるため、1千万レアルを投じて犯罪防止法案のPRを始めた。
「犯罪防止法―犯罪者の無罪放免を許さない」とのスローガンのもと、加害者が罰せられもせずに過ごす中、被害者らがいかにやるせない思いをしているかを訴える映像が、ユーチューブなどで今月末まで流される。
犯罪防止法案は同法案を審議するために開設された特別委員会で検討中で、提出されたままの形で委員会を通った項目は皆無だ。「カイシャ・ドイス(闇帳簿)を犯罪と定義する」の条文などは既に取り除かれたが、本会議で復活する可能性は残されている。
法案PRキャンペーンの開始を告げるイベントで、ボルソナロ大統領は「過去30年以上間違った方向に進んでいたものをすぐに完全に改善できるわけではない」と発言。法案の中身が部分的に変更される可能性は認めたが、最終的な議会承認に自信を見せた。ただ、大統領が警官の行き過ぎた行動の免罪を擁護した発言は反発を招く可能性がある。
モロ法相も、「『法も正義もないブラジルは終わりを告げた』というメッセージを社会に対して送るためには、行政府だけでなく、議会の役割も重要。承認に向けた手続きの中で、本質的な部分は一切失われてはいない」とした。
「犯罪者が厳しく罰せられないと、罰を受けているのはむしろ被害者や遺族」とのメッセージを中心としたプロモーションビデオの中では、2審判決後の刑執行擁護や、セミアベルトの人に認められる、クリスマスや父の日、母の日などに一時出所できる権利などの見直しも訴えているが、委員会はこれらの項目も既に削除している。