忙しい日程だったが、ベレン市では比較的市内観光ができた。そのうちの一つが、ナザレ大聖堂だ。ここでは毎年10月第2日曜日には国内最大規模のカトリックの祭り「ナザレ大祭」が行われ、200万人もの巡礼者が集まる。この祭りはユネスコ世界無形遺産にも登録されている。
この大聖堂に保管されている聖母マリア像は、昔漁師によって18世紀初頭に発見され、地域住民に色んな恵みを与えたという。そこから「奇跡を招く」と信仰が集まり訪れる人が増え、町が発展した。
また、大聖堂前には願い事が書かれた色とりどりの紙がくくりつけられており、ガイドは「これが落ちると願いが叶うと言われているんですよ」と説明する。
大聖堂はバチカンのサンピエトロ寺院を模したルネッサンス様式の教会で、内部は金がふんだんに使われており華やかだ。聞けばゴム景気の時に作られたとのことで、贅沢な造りになっているのに納得した。
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夕方にホテルへ行くと、ようやく後の便で出発した参加者全員と合流し、ホテル内で夕食を取った。同室の中原マリアさんが「いらっしゃってたんですね」と声をかけたのが、坂田マリアさん(86、二世)だ。
サンパウロ州リンス市出身の坂田さんは、ふるさと巡りの参加は3回目。アマゾンには前回の80周年の際に訪れ、「何もかもが珍しくて面白かった」と微笑む。
両親は「お金が稼げる」と聞き、ブラジルに憧れて移住したそうだ。当時は坂田さんの姉が3歳で、坂田さんはブラジルに来てから生まれた。「お金が稼げるどころじゃなくてね。あちこち引っ越した。大変だったのよ」と語る。
爪にマニキュアを塗り、洒落た格好をしているのが素敵だと伝えると、「昔から商売やっているから、身だしなみには気をつけている。着物を縫ったりもするのよ。貧乏暇なしでね、たくさん働いた」と何でも無いことのように笑う。
現在はソロカバ在住で、「お年寄りのために日本舞踊を教えているのよ」と話す。自身も86歳と高齢だが、「97歳になるおばあちゃんも教えているのよ。彼女が踊った時の幸せそうな顔を見るとね、まだまだ頑張らなきゃって思うの。でも、だからこんなに元気なのかもね」と健康の秘訣を語った。(つづく、有馬亜季子記者)