ホーム | 日系社会ニュース | 第60回海外日系人大会の大会宣言=日系アイデンティティを活かして多文化共生に貢献します=2019年10月3日

第60回海外日系人大会の大会宣言=日系アイデンティティを活かして多文化共生に貢献します=2019年10月3日

パネルディスカッション「日系資料館の連携を考える―レガシーを共有するために」右端はブラジル日本移民史料館の山下リジア運営委員長(提供・公益財団法人海外日系人協会)

 私たち、第60回海外日系人大会(2019年10月1日~3日=東京で開催)に世界各地から参集した日系人は、『令和の日本と国際化の懸け橋・日系社会』を総合テーマとして討議し、以下の5項目からなる決議を本大会の成果として宣言いたします。

《1》海外日系人大会の重要性
 海外日系人大会が節目となる第60回目を迎えました。令和初の開催となる本大会では天皇皇后両陛下のご臨席を賜り、温かいお言葉を賜りました。皇室が、世界の各地に暮らす日系人にお心をお寄せくださいますことに心より感謝いたします。
 海外日系人大会は、私たち日系人の声を直接日本に伝える最大の機会であるとともに、日本と私たちの居住国との間の懸け橋の役割を果たしてきています。海外日系人大会の更なる充実と同大会に対する日本国民の関心の更なる高まりを期待します。

茂木敏充外務大臣主催レセプションで乾杯の挨拶を述べる田中克之海外日系人協会理事長(提供・公益財団法人海外日系人協会)

《2》在日日系社会の経験
(1)大会が60回の歴史を数える中、中南米から就業の機会を求めて来日した、いわゆるデカセギ現象に始まる在日日系社会形成の歴史もおよそ30年を数え、30万人を超える日系人が居住しています。規模からいえば、ブラジル、アメリカに次ぐ、世界で3番目の大きさの日系社会です。
 在日第一世代は、就業や子弟教育面などでの問題を抱えながらも日本の経済活動を支える一方、居住国の文化や習慣を日本に持ち込み、日本の内なる国際化・多文化共生社会の推進に寄与してきました。
 今、日本は少子高齢化による労働力不足を補うため、新たに外国人労働者の受け入れを進めていますが、在日日系社会と、日系人を受け入れた地域社会の30年に及ぶ貴重な経験を、政策や行政サービスに生かすよう提言します。
(2)在日日系人の第二世代では、幼少のころに来日した者も含め、異なる文化を背景に持ちながら日本で教育を受け、医師、弁護士などの専門職、起業家、研究者等多彩な人材が徐々に育ってきています。
 しかし、これは一部に過ぎません。子弟の教育問題、特に日本語の習得は引き続き第二世代の最大の課題です。本年6月に日本語教育推進法が施行されたことを評価し、さらに在日日系子弟の教育環境を整備していただくよう政府、地方公共団体、企業の支援を求めます。第二世代は多文化社会に対応できる人材として、地域の国際化に貢献できます。
(3)海外日系社会では四世以降の若い世代に日本で学びたい、働きたいと考える者が多数いますが、四世ビザの条件は厳しく、同ビザによる来日者数は極めて少ないのが現状です。日系四世以降の世代にも三世までの世代と同様に、日本の在留資格について特別の配慮を求めます。

《3》日系レガシー(遺産)の継承と国際日系デーの展開
 昨年のハワイ大会で、私たちは、日系レガシーを誇りとし、次の日系世代や居住国の人々に伝え続けることを決議し、6月20日を国際日系デーとすることを宣言しました。
 これを受けて、本年、若い世代が中心となって国際日系デーを祝う催しや、日系レガシーと日系アイデンティティを再認識する行事が各国で実施されました。9月にはブラジルのサンパウロ市議会が、国際日系デーを同市の行事カレンダーに取り入れるとの決定を行いました。私たちは、日系レガシーと国際日系デーの意義を世界に訴え、世界各地の日系社会間の連携が促進されるよう努力します。

《4》日系資料館連絡協議会の設立
 世界各地にある日系資料館は、その地の日系レガシーを保存し公開する貴重な公共財です。各々の日系資料館の能力を高め、そのレガシーを世界の共有財産とするためには、日系資料館同士の情報交換と連携が必要です。
 私たちは日系資料館連絡協議会の設立を歓迎します。また、サンパウロのブラジル日本移民史料館で2020年にシンポジウムを開き、メキシコの春日財団がデジタル・プラットフォームの設立に協力するという提案があったことを、歓迎します。

《5》活躍するイコールパートナー(対等な協力者)へ
 日系人の家庭に育った若い世代は、日本の文化、言語や価値観を学び理解することで日系アイデンティティの確認につながっています。ITビジネス創出や伝統文化の活性化、さらに人口減少に悩む地方の再生とさまざまな分野で活動する若い在日日系人の取り組みを私たちは応援します。
 日系ネットワークと日本社会の連携が深まり、多文化共生社会づくりに日系人はイコールパートナーとして活躍できることを確信します。
 継承語として日本語を学ぶ子どもたちが日系人のアイデンティティを保つためにも、重国籍の容認に道を開くこと、彼らの継承日本語学習を支援することが重要です。