15日朝、社会自由党(PSL)の党首ルシアノ・ビヴァール下議に対して、連邦警察が家宅捜査を行なった。これは昨年の統一選で幽霊候補(ラランジャ)を立てた疑惑に関しての捜査だが、ここ数週間、ボルソナロ大統領と関係が険悪化して離党問題が加熱化する局面で、いきなり捜査が入った。ビヴァール党首の弁護士は「奇妙な捜査だ」と抗議しているとG1サイト15日付などが報じている。
捜査対象は、ブラジル北東部ペルナンブッコ州ジャボアトン・ドス・グアララペスにあるビヴァール氏の自宅やPSL党州事務所、印刷所だ。
昨年選挙では、党公認候補の一定数を女性にすれば、選挙資金として大金の政党支援金がもらえた。そのため、実際には選挙活動もしないのに、名前だけの女性候補が立てられ、その資金が別の男性候補に流用された疑いが持たれている。
特に同党のペルナンブッコ州やミナス・ジェライス州の候補にはその傾向が強いと連警は見ており、前々から捜査が進められていた。たとえばペルナンブッコ州の女性候補ロウデス・パイション氏の場合、得票は274票にも関わらず40万レアルの政党支援金を得ており、それが他候補に流用されていたことが2月に問題になっていた。
ビヴァール下議側のアデマル・リゲイラ弁護士は「10カ月前から捜査が行われ、たくさんの証言が集められたが、選挙中の不正疑惑の証拠は上がっていない。なのに、よりによってこんな政治的波乱の最中に家宅捜索をするのは奇妙だ」としてその日のうちに抗議声明を出した。
ビヴァール氏とボルソナロ大統領の対立激化が表面化したのは8日、ボルソナロ氏が官邸前で一般の支援者に対し、「PSLを忘れろ。ビヴァールは火の車だ」と発言し、公の場で離党をほのめかしたのが発端だ。
ただし、ボルソナロ氏側にも矛盾がある。党の汚職が自分のイメージダウンにつながることを恐れて、ボルソナロ氏は約20人の連邦議員を引き連れて離党すると脅している。だが、同じラランジャ疑惑があるミナス・ジェライス同党支部長だったマルセロ・アルヴァロ・アントニオ観光相は起訴までされているのに、大統領はかばい続けている。
この時期に離党すれば通常なら罰則が適用され、離党した政治家の分の政党支援金はPSLに入り続ける。ところが党側に問題があれば離党の理由が正当化され、罰則は課されない。まるで、党側に問題があることを強調するようなタイミングで捜査が入ったと指摘する政治評論家もいる。
今回の捜査の直前には、ボルソナロ氏が「PSLの過去5年間の会計監査を外部機関に」と求めたのに対し、PSL側が「18年の大統領選の会計も明らかにしてほしい」と返す緊迫したやりとりも行なわれていた。