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広島文化センター=57年ぶりに農業研修生受け入れ=ブラジル側の提案、藤岡さん来伯

来社した一行(前列右が藤岡さん)

 ブラジル広島文化センター(吉広ロベルト貞夫会長)が、今年から57年ぶりに農業研修を開始した。8月27日~11月28日まで3カ月間実施しており、研修生の藤岡香穂里さん(21、愛媛県)が同センター役員らと共に本紙に来社した。
 村上佳和副会長によれば、同センターでは1962年以降、母県からブラジルへの研修が途絶えていた。村上副会長は「16年に広島日伯協会の総会に参加し、ブラジルでの農業実習を提案した」とし、その後に実施要項案を提出。実施が決まり、今年2月に藤岡さんが応募した。
 藤岡さんは広島大学総合科学部3年生。農業が身近にある生活に興味があり、国内で金銭のやり取りが発生しない農業実習などで活動していた。次第に海外での活動にも興味を持つようになり、学内のブラジル留学経験者からブラジルでの研修事業を聞いて応募した。
 今回は藤岡さんたっての希望で、9月18日~10月3日にパラー州トメアスー郡で農業実習を行った。その理由を「人類学の授業でアグロフォレストリーを知り、トメアスーの話を聞いて行ってみたかった」と語る。藤岡さんの要望を聞き、同センターからベレンの北伯広島県人会の越知恭子さんや、トメアスー文化農業振興協会へ協力を依頼した。
 トメアスーでは、各日系農家を転々とした。そこで感じた日伯の農家の違いは「日本は家族経営だが、ブラジルは経営者と労働者がはっきり分かれている」と語り、それが理由で「一緒に働くのが時々難しかったことも」。実際、ある農家では労働者と藤岡さんを一緒に働かせることに戸惑っていたという。
 日系人の暮らしぶりにも驚いたという。「ブラジルに住んでいるけど、日本人としての意識が強い」との印象を語り、「今まで考えたことがない日本を意識したり、皆さんの苦労話を聞いてその生活を考えさせられた」とここまでの研修の成果を語った。
 吉広会長は「県人会も若い人が来て良い刺激になっている。青年を集めて交流を持って貰えれば」との期待を語る。会計の平延渉さんは「初めての取り組みなので手探りではあるが、県人会皆で協力し合えれば」と会全体で藤岡さんを応援していると述べた。
 残りの滞在期間は、アチバイア、弓場農場、コロニア・ピニャール、パラグアイでも同県の仲間の農場を中心に、研修を行う予定。また帰国後について村上副会長は「レポートを作成する他に、色々な場所で体験談を発表できるように取り計らいたい」と語っている。


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 ブラジル広島文化センターの農業研修で来伯している藤岡香穂里さんは、パラー州トメアスー郡で過ごした際に、家族の絆の強さに驚いたという。「各家庭では、家族で連絡を頻繁に取っていた。自分はあまりしないので、その差に戸惑った」という。確かに、家族を大事にするブラジルの社会や古い日本社会が残るコロニアと比較すると、現代の日本人は冷たいと言われる。藤岡さんには是非ブラジルの良い文化を取り入れて、日本に持ち帰ってほしいところ。