ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル最高裁》刑執行の基準を再審理=「2審有罪後」の基準変更?=VJ報道以降の圧力あり=結果次第でルーラらに恩恵

《ブラジル最高裁》刑執行の基準を再審理=「2審有罪後」の基準変更?=VJ報道以降の圧力あり=結果次第でルーラらに恩恵

トフォリ長官(Alessandro Dantas)

 今日17日、最高裁はかねてから懸案となっていた「2審での有罪判決後に刑執行か否か」の審理を、3件の案件を通して行う。同件は、結果次第で、ルーラ元大統領をはじめ、全国19万人の受刑囚の服役継続か否かにも結びつくものであるため、注目されている。15、16日付現地紙が報じている。

 この審理は、ジアス・トフォリ長官が14日に「刑事訴訟法283条」にかかわる三つの裁判を行うと宣言したのを受けたものだ。
 問題の裁判は、ブラジル弁護士会(OAB)全国審議会、ブラジル共産党(PCdoB)、パトリオッタ(旧・全国エコロジー党)が起こした3件の訴状に基づくものだ。
 これはつまり、ブラジルの裁判史上、最も大きな問題のひとつとなっていた「2審で有罪判決後に刑執行か否か」について、最高裁が再び問い直すことを意味する。
 刑事訴訟法283条では、「刑執行は控訴ができなくなるまで」できないことになっている。だが、刑執行を早める動きは最高裁内にもあり、2016年16月には判事投票6対5で、「2審判決後に刑執行」ができるとされた。
 だが、その後に最高裁の判事が数人入れ替わったこと、トフォリ長官自身やジウマール・メンデス判事が「3審有罪で刑執行」に意見を変えたことなどで、最高裁内で審理のやり直しを求める声が高まった。だが、18年4月に「2審で有罪になったルーラ元大統領に人身保護令を適用するか否か」の審理では、6対5で「適用を認めない」との判断を下した。
 だが、今年6月にはじまった、サイト「ジ・インターセプト」によるヴァザ・ジャット報道により、ラヴァ・ジャット作戦(LJ)の1審を担当したセルジオ・モロ判事(現・法相)と連邦検察庁LJ班主任のデウタン・ダラグノル検察官との癒着疑惑や判断の偏りを示す、携帯電話の盗聴記録が公表されたことで騒動が生じた。この報道後、ルーラ氏釈放を求める声があがったのをはじめ、2審判決後の刑執行の再度の見直しを求める声が強まっていた。
 この最高裁の動きに対し、下院の憲政委員会(CCJ)が「2審で有罪後に刑執行」とする憲法改正案(PEC)の審議を早めることを決めた。この場合、全体投票で下院の3分の2を超えなければならない。
 仮に「2審有罪では刑執行にならない」という判断になった場合は、LJ作戦だけでもルーラ氏や他12人の受刑囚が恩恵を受ける他、数千~数万人の受刑囚が恩恵を受ける可能性があると、現地紙が報じている。