新天皇陛下のご即位を国内外に宣言する「即位礼正殿(せいでん)の儀」が日本時間の22日午後1時、皇居・宮殿で行われた。それを受けて日系主要5団体が22日夜に「『即位礼正殿の儀』奉祝晩餐会」(福原カルロス実行委員長)をサンパウロ市シルクロ・ミリタルで開催した。参加費250レアルにも関わらず、サンパウロ州だけでなくアマゾナス州、南大河州など全伯から約800人が出席。日本で行われた儀式の映像もNHKから特別に提供され、日系人が一丸となって祝福した。
福原実行委員長による開会の挨拶の後、新天皇陛下の誕生から即位に至るまでを紹介するビデオと、「即位礼正殿の儀」の映像が特別に上映された。映像の中で、福原実行委員長と日伯文化連盟の土屋アリセ校長が、儀式の流れや独特の文化、しきたりを解説した。
「即位礼正殿(せいでん)の儀」に参列するために訪日したブラジル日本文化福祉協会の石川レナト会長に代わり、山下譲二副会長が挨拶に登壇。「日本の日本人と同じように、私たちも天皇陛下に対して誇りと尊敬の気持ちがある。この歴史的な瞬間を一緒に祝いましょう」と会場へ呼びかけた。
野口泰在聖日本国総領事は「天皇陛下はブラジルへ3度訪れ、08年には百周年を祝いに来伯してくださった。日系人の皆さんに対し、優しく親しみを込めて接してくださった」と当時の様子を語った。
ブラジル都道府県人会連合会の山田康夫会長による万歳三唱の掛け声に合わせ、日伯両国旗を持った参加者が一斉に旗を揚げ、天皇陛下のご即位宣明を祝福した。サンパウロ日伯援護協会の与儀昭雄会長が乾杯の音頭を取り、晩餐となった。
この日のために、コロニア歌手の平田ジョエさんが特別なショーをプロデュース。コロニアで愛唱される「ふるさと」に加え、北東伯を歌った名曲「アザ・ブランカ」に合わせて日伯融合の演出を披露し、最後は「ありがとうブラジル」を熱唱した。
「今日は本当に喜びの気持ちで来ました」。全伯から一門約20人が集まった安永家の長老、安永忠邦さん(98、二世)=サンパウロ州プロミッソン市在住=は、感無量な面持ちで声を震わせた。
「日本で2回ほど、皇太子殿下の頃にお会いした。何とも言えない嬉しさを覚えています。百周年でお会いした時は、しっかりと抱きしめてもらったんです」と幸せそうに微笑む。「私たちにとりましては、天皇陛下は何とも言えない大事なお方。親とも呼べる存在でしょうねぇ」と目を瞑りしみじみと語った。
アマゾナス州マナウス市から駆けつけた服部元さん(69、東京都)は、「3歳半で移住してブラジル在住歴は長いが、今でも陛下は素晴らしい方という思いを持っている」とし、「毎年元旦にNHKで天皇陛下が挨拶されるのを観ているんですよ」と変わらぬ尊敬の思いを語った。
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「即位礼正殿の儀」には、日本政府から招待を受けて、石川レナトブラジル日本文化福祉協会会長、菊地義治ブラジル日本移民110周年記念祭典委員会実行委員長、リオ日伯文化体育連盟の栗原謙一郎さん、パラナ日伯文化連合会の鈴木エドアルド会長、西森ルイス下議、西部アマゾン日伯協会の錦戸健会長、汎アマゾニア日伯協会の丸岡義夫副会長の7人が在ブラジル日系人代表として参列した。遠く離れたブラジルからこれだけ招待されたのは、皇室が日系人に心を寄せられているからこそ?
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「『即位礼正殿の儀』奉祝晩餐会」にアマゾナス州マナウス市から参加していた服部元さんは、3歳半でロンドニア州のトレーゼ・デ・セテンブロ植民地に移住したグヮポレ移民だ。「29家族入植したが、家も土地がある契約だったのに実際は無く、マラリアで何人も死んだ。町から15キロも離れた場所で、日本人が食べる物も少なく、15歳ぐらいまでは食べられる草を探したり魚を釣って生活していた」とのこと。27歳で親からJICA子弟研修を勧めてもらい、1年半日本に研修へ。「あの時に日本の日本人と接する機会がなければ、日本を気にすることもなく、天皇陛下に敬意を抱いていなかったかも」。過酷なアマゾン移民の心を癒やし、ルーツ意識を強めた訪日研修。日本の日本人にこそ、日本が持つ本当の価値をもっと痛切に感じてほしいもの。