桜が舞う「ブラジルのスイス」で仲間とゆっくり老後を――日伯福祉援護協会(与儀上原昭雄会長)が、高齢者養護施設「さくらホーム」(鈴木厚生運営委員長、原マリコ施設長)の入居者を募集中と聞き、取材に訪れた。
自分で身の回りの世話ができる人向けの長期滞在型高齢者養護施設で、医師や介護スタッフら医療・福祉の専門家によるサポートを受けながら、快適に生活を送れる。
サンパウロ州カンポス・ド・ジョルダン市に位置し、サンパウロ市から車で約3時間。標高約1650メートルとブラジルの都市所在地で最も高く、冷涼な気候から「ブラジルのスイス」と呼ばれ、人気観光地として知られる。治安も良好だという。避暑地で別荘も多く、豊かな自然の清澄な空気から戦前には結核療養施設も多く設けられた。
今回の入居募集は11人で、1人部屋が3人、2人部屋が8人。割高の利用料になるが2人部屋に1人での入居も可能。月額利用料は1人部屋が約4100レアル、2人が3200レ。
各部屋にはベッド、衣装ケース、トイレ、シャワーを完備。部屋の掃除と洗濯が毎日行われ、食事は栄養士が献立を管理。うどん、カレーなどの日本食も提供される。
施設には医師、精神科医、看護師、作業療法士、理学療法士がおり、理容師や、入居者に運動や遊びを教えるボランティアもいる。
入居者の半数ほどが一世で、非日系も2、3割を占める。日本語がわかる職員はいないが、現在JICAシニアボランティアの長橋秀樹さんが施設で活動している。
入居者はカラオケ、裁縫、体操、読書の趣味など活動に励んでいる。希望者をつのり、近くの町の祭りや観光に出掛けることもあり、誕生日会や運動会も開催される。
この施設の一番の特長は、住居のすぐ隣に広がる桜公園。約14ヘクタールの敷地には、約500本の雪割桜が植えられ、丘からは緑の広がる壮大な景色が見られる。日本庭園風の公園内には、鳥居や滝、橋も設置され、毎年7、8月の週末8日間に開催される「さくら祭り」では約2万人が訪れる。
非日系のナイール・シルバ・ド・ナシメントさん(88)は「みんなが家族。施設では何もできないと思っていたけど、春には桜を見たり、みんなでバスに乗って観光に出掛けたり、公園でゆっくり読書したり、居心地が良いの」ととびきりの笑顔を見せた。
「以前はサンパウロ市に住んでいたけど、空気が汚くて喉を悪くしていたんだ。でもここに来てから治った」と藤島芳久さん(79、大阪府)。入居2カ月で、最近では友人と将棋を楽しんでいる。
前運営委員長の辻雄三さんも「ここは寒いけど、温かい心があふれているよ」とほほえんだ。入居に関する相談、問い合わせは援協福祉部(電話=11・3274・6519/6518)まで。
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援協さくらホームのあるサンパウロ州カンポス・ド・ジョルダン市は有名な観光地。観光列車、熱気球や乗馬体験、名物のチョコレートやチーズフォンデュなど、大人も子どもも楽しめる。入居者を訪ねる家族や友人にとっても、観光半分で足を運べそう。実はさくらホーム自体も観光名所となっている。広大な桜公園は一般人も入場可能(有料)。来年には施設の改修増築、公園改修を行う予定。公園はJICAボランティアを招き、枯山水の日本庭園を設けるとか。約500本の雪割桜が立つ広大な公園を、庭として散策できる施設は他にないのでは。