サッカー元ブラジル代表のエジミウソン・ジョゼ・ゴメス・モラエス氏が代表を務める、プロサッカー選手育成を目的としたサッカークラブ「フッテボール・クルベ・スカイ・ブラジル(Futebol Clube Sky Brasil/以下FCSB)」が8月から選手受け入れを始めた。日本の「スカイライトコンサルティング(株)」(本社=東京都港区、羽物俊樹代表取締役)が運営に関わる。サンパウロ州サンタナ・デ・パルナイーバ市にある拠点「テレ・サンターナCFA(Centro de Formação de Atletas Tele Santana)」を19日に取材した。
スペイン式のサッカー教育プログラムと、繊細で素早い足技などが特色のブラジルの長所を取り入れ、欧州や日本で活躍できる選手の輩出を目指す。直近の目標は、来年のサンパウロ州選手権で好結果を収めることだ。
8月から選手の育成を始めるため、コーチ陣は3月から全国で大会などの視察、スカウト、入団審査を行い、1万人以上の選手を見てきた。バイーア州、南大河州など遠方からの選手もおり、サンパウロFCなど有名クラブから移籍した選手も所属する。
15歳以下(U15)、17歳以下(U17)の2部門で来年から大会などに出場するため、現在は14、16歳の選手約55人が練習を行っている。全選手と職員の多くは宿舎に寝泊まりして生活する。選手は平日午前中に市内の学校へ通い、午後は練習、土曜日は練習試合を行い、日曜日は休日となる。
芝生のサッカーコートも備え、空いている土地にさらに5面ほどコートを新設予定。トレーニングジムも準備中で、悪天候時に使用する体育館、リハビリなどに使う室内プールも完備する。
U14チームの監督を務めるカイオ・ルフィーノさん(31)は「選手の環境はとても良い。不真面目な選手は退団させ、常に新しい選手の入団審査を行っている」と育成に妥協は許さない。
プレー以外に、礼儀や教養などの教育面にも注力し、グラウンドに来たら必ずコーチにあいさつする、練習中は他人のプレーに腹が立っても悪口を言わないなど独自のクラブルールを定める。
U14主将のアンドレ・ルイスさんは、バイーア州の親元を離れて来た。「欧州で活躍しブラジル代表になる夢を叶えたい。またクリスチアーノ・ロナウド選手のように、最高のプレーに加えてグラウンド外での人間性でも尊敬されるような選手になりたい」と将来の展望を明かす。
単身で2年間のスペインサッカー留学を経て、現在FCSBで特別に練習に参加する、唯一の日本人の中村希(まれ)さんは「1対1の攻守で勝ち抜き、状況を打開できる突破力を身に付けたい。日々努力を積み重ねて目標に近づいていく」と力強く語った。
ルフィーノさんは選手の現状について「まだ完璧ではないが、将来海外で活躍できそうな選手がいる」と自信をにじませた。
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FCSBの監督カイオ・ルフィーノさんは非日系だが日本語は完璧。ブラジルのプロ選手だった父エジソンさんが、日本に指導者として招へいされ、家族も日本に移り、カイオさんは小学校と高校を日本で過ごした。Jリーグでもプレーし、帰化して日本代表を目指すことも考えたとか。現在はFCSBとサンパウロ州バルエリ市の少年クラブチームで指導を行う。FCSBでは将来的に日本のチームを招いて大会開催も考えている。今後もルフィーノさんが日伯サッカー界をつないでくれそうだ。
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FCSBでは選手の1日の練習時間は1時間半ほど。日本の中高校の部活動では毎日午前・午後通して練習することも珍しくない。ルフィーノさんは「選手の集中力、疲労、練習成果などを考え、効率が最も良いのがこの練習時間だった」という。日本の学校の部活動は、これを見習って考え直すべきかも。