この法令が可決されたことで、コウト・フィーリョはこう思ったに違いない。
「なんとか〝丸〟とかいう移民船に乗った何万人もの黄色いヤツらがやってきて、戦場地のような植民地にばら撒かれた。侵略手段として、黄色い危険者たちはその地に根を下ろしていった。ところが、抜け目のない日本政府は執拗に迫り、法を破って、日本人を際限なく送り込んだ。このようにして、日本人はブラジルに侵入しつづけた。今になって、人道を逸した彼らのテロリズムを目の辺りにし、大きな過ちに気付かされたのだ。
臣道聯盟の騒動で世論が揺れていた1946年8月27日、コウト・フーィリョとジョゼ・アウグストの改正案が投票された。3165号の新憲法の第1条で、「年齢、出身地を問わず、日本移民の入国をいっさい禁止する」―これは1934年の法令とは全く異ったものだった。
移民の人数制限は他の国の移民と同数で、1年に50年前から入国した移民総数の2%までとなっていた。当時は日本からしか移民がきておらず、その制限数は明白ではなかったが、制限の目安はあった。だが、今回は1人も入国できないことになった。
立憲議会での討議は活発に行われた。PSDのアドロアルド・コスタはオリベーラ・ヴィアナが使った「日本人は硫黄と同様で、決して溶け込むことはない」という言葉を何度もくり返した。アドロアルド・コスタと同じ党の改正の共同草案者ジョゼー・アウグストはUDNのアウレリアノ・レイテの「非人間的な修正案だ」という意見に対し、「国に溶けこもうとしない者たちに国が侵略されてもいいのか? それを阻止するのを非人間的というのか?常にそして、ますますわが国の国民は危険にさらされることになる」と反論した。他の議員たちも日本移民について「望ましくない者たち」「有害無益な者たち」「災いをもたらす者たち」と述べた。
この修正案に反対するわずかな議員たちの一人、アウレリアーノ・レイテはこの案を憲法に挿入する必要はなく特別条例にすべきだと意見した。すると、PSDのネレウ・ラーモスは「日本移民導入に真っ向から反対する。憲法に特別条例を加えることはできない」と反論した。
改正に反対する党はその内容が引き起こす問題よりも、状況、手段、法令的手段として、憲法改正ではなく特別条例にすべきだと申し立てたのだ。
激しい論戦が繰り広げられ、長時間にわたる論議のあと、議院長のメーロ・ヴィアナは「3165号の改正案に賛成の方はご起立願います」と言った。しばらく待ったが、その結果を告げる確信がなかった。
「大きな課題を決議することなので、賛成か反対かを決定する責任を取るわけにはいかない。投票数をきちんと数えたい」と言い、そのようにしたところ、賛成が99表、反対も99表と全く同数の結果が出た。
「わたしは反対に投票する。この改正案は却下された」と議長宣言した。
ミゲル・コウトとジョゼー・アウグストの改正案は「法令162号‐日本移民の選択、入国、分配、滞在地は当令により、国の要求によって決められる」と言うことになった。
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