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NEB=「受け継いだ価値観を次代に」=日系企業家協会の設立式典=経営者の視点から意識深堀り

呼びかけ人の西村パウロ氏

 有名企業家・西村パウロ氏の呼びかけにより、ブラジル日系企業家協会(NEB、Nikkey Empreededores do Brasil)の設立イベントが、10月25日午後9時からサンパウロ市南部のヴィラ・ブルー・ツリーで盛大に開催された。西村氏は挨拶で「父や祖父の代から受け継いだ価値感を、次世代やブラジル社会に伝えるために新団体を設立した」と趣旨を説明した。

 西村氏は1990年に工業プラントを専門に手掛ける建築会社「ニプラン」を創立し、現在の従業員は7千人を数える。
 彼が1年前に7人の日系企業家友人を集めて「一世から受け継いだ日本的経営を、どう次世代に伝えるか」を話し合ったことから始まり、度々議論を重ねてきた。ところがその話し合いに、子供世代を呼んでも「関心がない」と出席を断られた現実にショックを受け、仲介できる人を探した。

School/SS99社のヴィトル・ハヤシダさん(中央)とフラヴィア・ノゲイラさん(右)

 その結果、企業家とその子供の中間世代に位置する若手注目株のマーケター(ブランドや商品の戦略の立案・提案者)、「School/SS99」社のフラヴィア・ノゲイラさんとヴィトル・ハヤシダさんに「日本的経営の次世代継承戦略」の立案を依頼、当日発表された。
 二人は昨年来、日系企業家17人に2時間ずつ聞き取りをおこない、次にその子供世代を集めて本音や関心事を聞いた。「意見を聞く会は午後7時に始まり、白熱すると午後11時までかかった」という。「次世代の関心事は自然環境、音楽、論理、哲学。特に、なぜ自分はここにいるのかという疑問が強い」と集約した。
 「子供世代がルーツに関心を持たないのは、歴史に関する知識が足りないから。移民への知識がなければ、関心の持ちようがない。移民史を掘り起こすことで日系意識を深められる。世代を超えて伝える価値があることを見出して広めることがNEBの役割」と発表し、子供世代を舞台に上げて彼らの意見を聞き出す座談会を行い、拍手が会場から送られた。
 西村氏は、大手食品会社の商品パッケージなどを手掛ける有名な工業デザイナー、ナリタ・マリオ氏に新団体のロゴ制作を依頼し、発表された。
 西村氏は「日系人は回復力、倫理、勤勉さ、家族尊重、質実さなどをもってブラジルに根を張った。日系企業の事業総額は1千億レアルに相当し、約20万人の雇用を生んでいると我々は推計する。子孫にルーツ意識を残すことで、ブラジル社会にそれを還元し続けたい」と訴えた。
 現在、約50人の日系企業家が加盟する。問い合わせは担当ガブリエラ・ビアンコさん(11・3035・3070 gbianco@suportecomunicacao.com.br)まで。

豪華な会場の様子


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 ブラジル日系企業家協会(NEB)の設立式典を取材する中で感じたのは、日系経営者が後継者に困っているようだ―という点。せっかく自分の代で大きくした会社だけに、まったくの別人に渡すより、子孫に継いでほしいという意識があるようだ。子孫が日系意識を強めて会社を継いでくれれば、より強固な経営基盤にできるという狙いがあるのかも。二世の側から三、四世世代に日系意識の覚醒を呼びかけるプロジェクトという意味で、かなり興味深い協会といえそうだ。