9日、「第2審の有罪で刑執行か否か」の最高裁審理が終わり、判事投票の末、同裁が2016年10月に出していた、2審後の刑執行が6対5で否決された。これで、パラナ州連邦警察に収監中のルーラ元大統領が釈放される可能性も出てきた。8日付現地紙が報じている。
10月23日までの時点では4対3で2審後の刑執行賛成派がリードしていた。この日も、最初に票を投じたカルメン・ルシア判事は賛成に投票し、王手をかけた。
だが、ジウマール・メンデス判事が反対に票を投じた後、セウソ・デ・メロ判事もそれに続き、5対5の同点となった。
残るはジアス・トフォリ長官のみとなった時点で、周囲は審理の一時停止の可能性も考えた。最高裁では注目度の高い審理を行う場合、「票の見直し」を請求して審理を一旦止め、結審を延期することが珍しくないため、それに倣うかと思われたのだ。
今回の審理に関しては、ヴィラス・ボアス元陸軍司令官が最高裁に対し、「票を逆転させると軍が黙っていない」などの威嚇行為とも取れる発言があった他、検察庁や議会、ネット上の国民からも反対の声が多くあがっていた。
だが、審理は休憩後、すぐに再開された。トフォリ長官は「憲法に記されていることには従うべき」との見解を示し、現行の刑法283条で定められている方針に従う意向を示した。つまりは、2審での刑執行に反対の意向を表明したわけで、これにより、投票結果は逆転した。
このような結果となったのは、不法にアクセスした携帯電話の通信記録を基にした「ヴァザ・ジャット(VZ)報道」により、ラヴァ・ジャット作戦(LJ)担当判事だったセルジオ・モロ現法相とパラナ州のLJ班主任のデウタン・ダラグノル捜査官の間で、司法と警察機構の独立性などを疑われる癒着ぶりや、客観性を欠いた事件の推理、捜査対象の政治家を依り好みしたりした疑惑が生じ、司法界からの強い反発が生じたことが大きかった。
また、票を逆転させたローザ・ウェベル判事に対する、反対派の事前の威嚇行為なども問題視されていた。
この投票結果を受け、ヴァザ・ジャット報道後にとみに活性化していた「ルーラ・リーブリ(釈放)」運動を展開していた労働者党(PT)の支持者は、各地で喜びを爆発させた。
ただ、トフォリ長官は、議会での刑法238条の改正には前向きな判断を示している。仮に議会が「2審で刑執行」、もしくはトフォリ判事が支持しているといわれる「3審で刑執行」という内容で法改正を行えば、判断の逆転はありえる。だが、その場合は、上下両院で3分の2以上の賛同を2度得ないければならない。
ルーラ氏の弁護団は8日、ルーラ氏釈放を求めて動き出した。