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HY=待望のブラジル初公演!=会場一体、歌って踊る=沖縄県人ら千人が文協埋める

琉球國祭り太鼓とHYの共演(集合写真以外はすべて城間セルソ明秀さん提供)

 「またブラジルでライブしたいです! その時も会いに来てね!」――HYのギターとボーカルを担当する新里英之が呼びかけると、会場から拍手と大歓声が返ってきた。今月8日午後8時から、サンパウロ市リベルダーデ区の文協大講堂で、初のブラジル公演を行った沖縄県うるま市出身の大人気バンド「HY」。会場には沖縄県に所縁がある若者を中心に約千人が訪れ、会場一体となって歌って踊り、一夜限りの特別な公演を楽しんだ。

会場全体で記念の集合写真(与那嶺ダニエルさん提供)

 真っ白い爽やかな衣装を身にまとったメンバーは、舞台に登場し、観客に一礼した。一曲目の「大好きだもの」からパワー全開で飛び回り、舞台や客席を縦横無尽に走り回る新里に、パワフルな名嘉のドラムと許田のベースが鳴り響く。
 「ブラジルの皆さん、はいさーい(こんにちは)!」――新里の呼びかけに、客席も「はいさい!」と元気よく返すと、「最高だね!」と新里が声を上げた。ドラムの名嘉俊、ベースの許田信介、キーボードとボーカルの仲宗根泉も、観客の反応に微笑む。
 幼馴染同士で2000年に結成したHYは、今年で20周年を迎えた。新里は、「記念すべき20周年に初めてブラジルに来られて最高です!」と嬉しそうに語りかけ、「同じウチナーンチュいますか?おじぃ、おばぁもいるね」と同郷の仲間に呼びかけた。

舞台を降り観客と触れ合う新里

 さらに、「ここブラジルに一世から六世とつなげ続けてくれたから、僕たちは来られました」と感謝の気持ちを述べ、「沖縄の海、空、星を見て作った音楽をたっぷり届けます。みなさん受け取ってね!」と叫び、客席も声援で応えた。
 会場を一段と盛り上げたのは、HYを代表する曲『AM11:00』。仲宗根の伸びやかな歌声が響き、続いてサビになると観客も一緒になって歌い始める。さらに「皆歌って!」と仲宗根が振ると、会場の一体感が高まった。
 祖父母から聞いた戦争の話を元に作った『時をこえ』では、当地の琉球國祭り太鼓と共演。一糸乱れぬ力強い太鼓の音に、新里の三線の音色と、仲宗根の優しい声が響く。
 続いて、別れた恋人を思い続ける切ない恋愛ソング『366日』を、仲宗根が繊細だが力強い声で歌い上げる。『Oh!AIWO』では、日系人・ブラジル人の子供のダンサー8人とコラボ。さらにメンバーによるポ語での自己紹介や、新里が客席を走り回り観客と触れ合い歌うなど、サービス満点のショーとなった。
 最後には、観客も席を立って沖縄民謡の独特の踊りであるカチャーシーを思い思いに踊った。沖縄県出身の高齢の観客は、嬉しそうな笑顔で得意の踊りを舞う。
 舞台を去ったHYを追いかけるかのように、客席から「アンコール」が続く。暫くすると、新しいアルバムのテーマである虹色の服に着替えたメンバーが、手を振りながら再び舞台に登場した。
 琉球國祭り太鼓と共に、故郷の沖縄を想って作った『帰る場所』と、『Street Story』を披露。最後は「またブラジルに来たいです!」と笑顔で語り、惜しみない拍手が送られた。


HY公演にリオから非日系も=「待ってました」と大興奮

 菊田小百合アルレテさん(39、三世)は、2008年に県費留学で日本へ行った仲間とHY公演に参加した。「当時流行っていたHYが大好きで、ライブを知ってすぐにチケットを買ったの! 歌のメッセージが伝わってきて、すごく良かった」と興奮した様子で語る。
 友人の栗崎ディエゴさんも(36、三世)「当時は『AM11:00』が流行っていて、何回もカラオケで歌った曲なんです。だからこの曲が流れた時は、『待ってました!』って気持ちだった」と笑った。

ニコラス・ポンテスさん

 400キロ離れたリオ市から駆けつけたニコラス・ポンテスさん(27)は「小さい頃から日本文化や音楽が好きで、日本人のショーがあるといつもサンパウロまで来ている」というほど日本好き。
 今回もHYの公演があることを知り、すぐにチケットを購入し、上司に仕事の休みをもらえるよう交渉した。「HYってバンド名は知らなかったけど、曲は知っていた。公演はすごく良かった! 特に明るい曲が好きだった」と語った。


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新城エヴェルトンさんと父のエリオ・タケシさん

 HYの公演に訪れた新城エリオ・タケシさん(76、二世)は、「息子は琉球國祭り太鼓で副会長を務めていて、それでHYの曲も叩いているから知っていて好きだった」と話す。それを知っていた息子のエヴェルトンさんが、公演が決まった時にチケットを購入してくれたのだとか。「息子がHYと共演して太鼓を叩いているのを見られて、親としては誇り。嬉しいね」と喜びを語り、公演にも大満足した様子だった。