13日朝、ブラジリアのベネズエラ大使館に、同国のニコラス・マドゥーロ大統領と敵対するフアン・グアイド国民議会議長(暫定大統領)を支持するベネズエラ人の集団が侵入し、騒然となった。13日付ブラジル国内紙サイトが報じている。
侵入行為が行われたのは午前5時頃で、少なくとも14人のグアイド派のベネズエラ人が同国大使館の中に入った。大使館側は侵入者たちは塀をよじ上って入ったとしているが、グアイド派のグループは、大使館職員がコンタクトを取り、門も開けてくれたと主張している。
他方、同大使館の外では、労働者党のパウロ・ピメンタ下議らが率いる親マドゥーロ派の人たち約30人が同大統領への支持を主張し、侵入に強く抗議した。
ブラジルはマドゥーロ政権を認めておらず、今年1月に暫定大統領と自己宣言したグアイド氏を正規の大統領として認めている。ブラジルにはグアイド氏指名のマリア・テレーザ・ベランドリア・エスポシト氏が大使として迎えられているが、大使館は現在もマドゥーロ派の人脈がそのまま残っており、エスポシト氏はブラジリア内のホテルに事務所を構えるという、複雑な構成となっている。
午前8時頃、グアイド派の侵入に業を煮やしたマドゥーロ派の人たちが大使館に押しかけ、緊張が走ったが、グアイド派は構内に車を横付けして侵入を阻止。館外では両派の衝突も起きたが、かけつけた軍警によって騒動は収まった。
エスポシト大使によると、「グアイド派の人たちは平和裏に入場を行った。大使館内には職員用の住居があり、管理業務にあたっている職員たちには、全ての労働法上の権利を保障するから、大使館業務を一緒に行うよう勧めた」という。
だが、大使館の管理を任されていたフレディ・メレゴテ氏によると、グアイド派の人たちは「大使館内に侵入し、職員の家族の権利を脅かした」と主張している。
ベネズエラのホルへ・アレアザ外相も、「侵入行為が行われた」とし、抗議声明を出している。
ベネズエラ大使館はベネズエラの領土の一部とみなされるが、護衛を任されているのはブラジルだ。大統領府安全保障室(GSI)は「ブラジルならびに連邦直轄区の治安関係者は、状況を平和的に解決し、通常の状態に戻るための措置を講じている」との声明を出した。
今回、この問題が大きく取り沙汰されたのは、10日にボリビアで政変が起こった際、同国のベネズエラ大使館が、反エヴォ・モラレス派の民衆によって焼き討ちにされたことが背景にある。エヴォ氏は親マドゥーロ派として知られていた。
今回の騒動はブラジリアでBRICS首脳会議が行われる日の朝に起きた。この会議に参加するロシア、中国、インド、南アフリカはマドゥーロ氏を大統領として支持しており、今回の行為は、そうした国々の首脳に対するグアイド派による挑発行為ではないかと見る向きもある。