ジアス・トフォリ最高裁長官が、中銀財務情報部(旧金融活動管理審議会、COAF)に、過去3年間の捜査データ約60万件分を送るよう命じ、物議を醸している。その中には、ボルソナロ大統領長男のフラヴィオ上議によるラシャジーニャ(議員たちが、幽霊職員も含む議員付職員の給与の一部を着服する行為)疑惑も含まれている。15~16日付現地紙などが報じている。
COAFは資金洗浄などの調査を行う機関で、フラヴィオ氏がリオ州議だった昨年12月、同氏の元職員ファブリシオ・ケイロス氏の口座に、同僚職員からと見られる多額の金が振り込まれていた疑惑を指摘して話題となった。当時のCOAFは財務省の管轄だった。
COAFは新政権発足で法務省の管轄下に移ったが、その後、暫定令(MP)承認時に経済省の管轄下に戻った。
COAFからの情報は汚職捜査の切り札の一つで、フラヴィオ氏が裁判所の許可もなくCOAFの情報を使って捜査が行われたと不服を唱えたことで、トフォリ長官が7月、裁判所の許可が出ていないのにCOAFの情報を使って行われていた捜査全てを差し止めた。この判断で差し止められた捜査は、フラヴィオ氏のものも含め、約700件に上り、批判の声があがっていた。
COAFはその後、中央銀行の管轄となり、財務情報部(UIF)と名前を変えた。トフォリ長官は10月25日、COAF時代の捜査のデータ(RIF)のコピーを送るよう中銀に命令した。
UIFはコピーは渡せないとした上、同長官にシステムにアクセスできる暗証番号を渡したが、同長官は18日までにコピーを送付するよう命じた。UIFのデータには守秘義務の対象となる情報も含まれている。3年分の情報は約60万件に及び、フラヴィオ氏のような個人データはもちろん、企業の所得税申告なども含まれる。
同長官は国税庁にも同期間中の懲罰関係のデータ(RFFP)提出を要請している。UIFが独自に行った捜査か、他の機関の要請で始まった捜査かなどを分析する意向だという。
同長官は検察庁長官にもUIFの情報にアクセスしていた検察官に関する情報を要請。アウグスト・アラス長官は命令の差し止めを求めたが、トフォリ長官は15日にそれを拒んだ。
トフォリ長官の命令は税務署や検察庁、議会の強い反発を呼んだ。アルヴァロ・ジアス上議などは「すごくおかしな話だ。長官がスパイ活動を行おうとしていると、誰かが言い出しても仕方がない」と語った。
上院では、トフォリ長官の最後の後押しで「2審有罪での刑執行」が否決されたことへの反発もあるため、同院でかねてからあがっていた、最高裁判事に対する議会調査委員会(CPI)、別名「ラヴァ・トガ」への動きも進みかねない。
最高裁では、7月にトフォリ長官が出した暫定令をどうするかに関する審理を20日から始める予定で、フラヴィオ氏への捜査が再び始まるか否かも注目されている。