ブラジルのパウロ・ゲデス経済相が25日に、「ブラジルは低金利とドル高に慣れなくてはいけない」と発言した翌26日、ドル/レアル市場は一時1ドル=4・27レアルを付けた後に、1ドル=4・24レ(前日比0・61%高)と史上最高値で取引を終えた。27日付ブラジル各紙・サイトが報じている。
ブラジル中銀が行った2度の市場介入も効果を発揮せず、ロベルト・カンポス・ネト中銀総裁は「市場は機能障害を起こしている」と不発を嘆き、次の介入を示唆した。米ドルは今年に入って対レアルで9・52%値を上げた。11月だけで上昇率は5・76%だ。
通常の両替商で、レアル現金でドル現金を買う場合の「観光ドル」のドル買いレートは、1ドル=4・43レに達しており、外国旅行を予定するブラジル人には大きな痛手だ。
ドル高は企業活動にも影響を及ぼしている。半製品や原材料を輸入する企業からは、「負担増を、いつまで価格に上乗せせずにいられるか分からない」との声も聞かれる。
ラ米で最大の自動車部品メーカー、ボッシュ・ラテン・アメリカ支社(本社はドイツ)のベザリエル・ボテーリョ社長は「相場が安定していることが理想」とコメントしている。
ドル高に頭を悩ます業界がある一方、農業や鉱業を始めとする輸出産業にとってドル高は歓迎すべき傾向だ。レアル安で外国人観光客が増えることが予想され、一部観光地にとっても好要因だ。
それ以外にも、リオ・グランデ・ド・スル州に本社を置く靴メーカーTABITAのダニエル・アモリン部長は、3年前は生産量の3分の1が国外向けだったが、現在は生産量の75%を国外に輸出しているとし、「生産が止まっていたラインを稼動させ、120人の雇用を復活させる」と語った。
経済関係者筋からは、ドル高は金利引き下げのペースを緩和させるかもとの予想が出ている。
ブラジルが高金利だった時期は国際投資家がレアルを買って、ブラジル国内で運用することに旨みがあったが、ブラジルの金利が下がったことで、その旨みもなくなった。これ以上の利下げは、ドル高をさらに進めてしまうから、利下げは見送られるのではないかというのだ。現在、経済基本金利(Selic)は年利5%。今年最後の通貨政策委員会(Copom)は来月10、11日に予定される。
新興国通貨は米中貿易戦争の影響を受けて、おおむね対ドルで値を下げている。だが、財政改革や行政改革の遅れというブラジル特有の事情もレアル安要因となっている。
なお、石油公社ペトロブラスは、精油所出口のガソリン価格を最後に値上げした19日からわずか8日の27日午前中、また約4%引き上げ、1リットル=1・92レとした。今年の5月末に、1リットル=1・95レを記録して以来の高水準だ。
なお、27日午後5時時点での為替相場は、1ドル=4・258レを付けた。