【既報関連】ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事は5日、1日にサンパウロ市南部パライゾポリスで起きた、ファンキ・パーティでの将棋倒しによる少年少女9人の圧死事件や類似の事件のビデオで、「真相を知り、ショックを受けた」と語った。同知事はそれらの事件に共通する軍警の態度を問題視し、「治安対策を再考する」と発言。1日の事件直後には「治安対策は変えない」としていた態度を一変した。6日付現地紙が報じている。
1日の圧死事件では、犯罪者2人を追跡していた軍警が犯人の後を追って約5千人が集まっていたファンキ会場に入りこみ、狭く密集した場所であったにも関わらず、催涙ガス弾やゴム弾を使用(軍警の正式発表によるとガス弾四つとゴム弾8~9発)したことで大混乱が生じ、それに伴って発生した将棋倒しで10代の少年少女9人が亡くなった。
この事件直後、ドリア知事は「ファンキのパーティがそもそも違法だ」「これまでの治安対策を変えるつもりはない」との考えを強く打ち出していた。
だが、その後も同事件に関して、警察側の証言を覆すような動画が数々あがり、警察に対する市民の反感も高まっていた。4日にはセルジオ・モロ法相が、「パライゾポリスでの警察の対応には重大な誤りがあった」と認める発言を行った。同法相は、故意ではない警官の暴力や殺害を免罪とするという項目を汚職防止法に盛り込もうとする(下院は同項目その他を削除後に承認)など、警察による治安強化を推進している代表的な存在だ。
それもあってか、ドリア知事は5日、「今後は警察によるひどい捜査が行われないように気をつけたい」と、突然、これまでの治安対策に関する意見を変えた。
同知事がこのような見解に至った直接的な原因は、昨年10月にパライゾポリスで録画された、路地から出てくる人たちを軍警が警棒で殴ったりする映像を見たためだ。「あの映像を見て非常にショックを受けた」とドリア知事は語っている。
また、フォーリャ紙の報道によると、サンパウロ大都市圏ではこの3年ほど、「パンカダン」と呼ばれる違法のファンキ・パーティの取り締まりが強化されている。取り締まりの過程では、パライゾポリス同様に、狭い場所でゴム弾や催涙ガス弾を使ったり、警棒で殴るなどの暴力を振るったりして混乱が生じ、死者や失明者などが出る例も少なくないという。同紙によると、少なくとも16人の死者が出ているという。
ブラジルでは現在、警察による強硬な治安強化策が問題視されつつある。5日にはリオ州のウィルソン・ヴィツェル知事が、10日以内に同州の治安対策について説明するよう求められた。同州でも警察による死者が増える傾向が続いている。