【既報関連】ブラジル上院憲政委員会(CCJ)は10日、2審判決後の刑の執行開始を認めるとした法案(PLS166/18)を賛成22、反対1で承認した。同法案は11日のCCJでも再度承認された。10、11日付現地各紙・サイトが報じている。
2審判決後の刑の執行開始は、セルジオ・モロ法相が提案した犯罪防止法に元々含まれていたものだが、4日に行われた下院採決では取り除かれていた。
現在の刑法283条には、「現行犯の場合、司法に有罪と最終判断を下された場合、また、捜査のために必要であるとの判断によって一時拘留または予備拘留の決定が出された場合を除き、いかなる者も拘留されない」と書かれている。この部分を根拠として、最高裁は11月に2審判決後の刑執行を否決。これにより、サンパウロ州グァルジャーの三層住宅事件で2審有罪判決を受けたため、3審の手続きを進めていたのに、前倒しで禁固刑が執行されていたルーラ元大統領も釈放された。
ダヴィ・アルコルンブレ上院議長(民主党・DEM)は、先月26日に「2審判決問題は法案(PL)ではなく、憲法改正案(PEC)で扱うとの合意が出来ていた」とし、PLS166/18の上院本会議審議を先送りにする意向だ。
ラヴァ・ジャット推進派議員は同議長の動きを、「2審判決後の刑の執行を可能にするのをわざと遅らせる動き」と批判している。
憲法改正は法案成立よりも議会承認のハードルが高く、「PECで扱う」と固執することは、成立を遅らせているのに等しいと言うのだ。
アルコルンブレ議長は、「(2審判決後の刑執行を認める点では同じ内容だが)下院で出されているPECの方が、上院のPLよりも法的安全性が高い」とし、下院がPECの審議に関する方針を決めるまで、上院での法案審議を避けたい意向を表明。わざと採決、承認を遅らせようと策をめぐらしているとの見方を否定した。
犯罪防止法、上院採決へ
セルジオ・モロ法相は、11日も議会の諮問を受けた。今月4日に下院で承認された、犯罪防止法の上院本会議採決が行われたのだ(本稿締め切り時点では、結果は不明)。アルコルンブレ議長は、10日の午後2時12分付で、「10日にCCJで承認された犯罪防止法を11日の上院本会議の議題とすることを決めた。無変更で承認されることが期待される」とツイートしている。
モロ法相が今年1月に提出した原案からは、下院承認の段階でいくつかの項目が削られた。
上院のモロ派議員、アルバロ・ジアス上議(ポデモス)は、「下院で承認された法案には、汚職の定義づけに関する条文など、本質的に大事な項目がまだ欠けている」と語り、上院本会議でそれらを盛り込みたいとの意向を表明している。