【既報関連】ブラジル上院が11日、犯罪防止法案を承認したと、11、12日付現地各紙・サイトが報じている。
同法案はパコッテ・アンチクリーメと呼ばれ、セルジオ・モロ法相が今年早々に提出。下院での審議の際は、アレシャンドレ・デ・モラエス元法相(現最高裁判事)とスタッフが作成し、18年に提出した犯罪防止法案も参照された。
現在は30年の禁固刑の最長期間を40年とするなど、同法案には、刑法を変更する内容が含まれている。
しかし、モロ法相が望んでいた項目「2審判決後の刑執行」は取り除かれ、「プレ・バーゲン」(減刑と引き換えに有罪を認める行為。司法取引の一種だが、報奨付供述とはやや異なる)も、原案が一部変更された。
プレ・バーゲンは、暴力犯罪以外、また、最小刑罰4年以下の犯罪にのみ適用される。家庭内暴力や女性への暴力事件も対象外だ。
4日の下院承認後、モロ法相は議会が原案から取り除いた項目を惜しみ、「下院で取り除かれた項目の上院復活、もしくは別法案での復活を目指す」と語っていたが、法案は上院でも変更なく承認された。これは、同法案承認のため、削除項目は別法案で扱うとの合意が成立したからだ。
ウンベルト・コスタ上議(労働者党・PT)は、「原案よりもずっと良くなったから賛成する。もちろんまだ完璧ではないが、これを承認しない方がマイナス面が大きい」と語った。
法案の上院報告官マルコス・ド・ヴァル上議(ポデモス)は、法案が骨抜きにされたとの見方を否定し、「パコッテ・アンチクリーメは社会全体の望みだ。原案の約8割は残った。大きな前進だ」と語った。
その他の主な承認項目
陪審員裁判で有罪となった被告はすぐに拘束されることなく控訴できていたが、今回のパコッテでは、有罪で量刑が15年以上の場合は即刻拘束となる(原案では全員が即刻拘束だった)。
「仮釈放条件」も、特定の割合で刑期を務め、その間の振る舞いがよければ仮釈放となっていたが、「直近12カ月で深刻な落ち度がなかった者のみが仮釈放となる」との条件が付加された。
また、原文では必要とされた、厳重警備下の連邦刑務所に収監されている刑事被告人と弁護士との会話録音への裁判官の許可は、審議の過程で不要となった。
現在は自宅禁固刑や準禁固刑(昼間外出を認めるセミアベルタ)の権利を得るには、刑期の最低6分の1(16・6%)を務める義務があるが、犯罪の重さや前科の有無に応じて16%~70%となった。再犯者は条件が厳しくなり、犯罪組織形成やミリシアで断罪された場合は権利を失う。
凶悪犯罪者は、一時釈放や自宅禁固刑獲得の条件が厳しくなる。また、「凶悪犯罪」の定義が拡大され、重傷を負わせる窃盗、爆発物を使った窃盗、使用が制限されている銃器による殺人なども含まれることになった。