学校法人酪農学園フィールド教育研究センターの副センター長を務める今井敬さん(いまい・けい、57、北海道在住)、大分大学経済学部教授の大呂興平さん(おおろ・こうへい、42、大分県在住)が、ブラジル国産和牛に関する調査のため3日に来伯した。9日まで滞在し、ブラジル和牛生産者協会の協力の下、サンパウロ州内の食肉処理場や牧場、品評会を視察した。
同協会の飯崎貞雄名誉会長(78、北海道出身)、植西暁ロジェリオさん(57、二世)と、今井、大呂両氏の4人に対し、9日に話を聞いた。
今井、大呂両氏は日本国外で外国産和牛が普及してきている昨今の情勢を踏まえ、ブラジル国産和牛の生産方法、消費の動向を調べる目的で来伯した。
飯崎氏によれば、ブラジル国内では現在約2億頭の牛が飼育され、うちブラジル国産和牛は6~7千頭。加えてブラジル国産和牛の条件を満たしているが、登録されていない牛が約3万頭いる。ブラジル国産和牛は国内で高級とされ、一般的な食料品店に並ぶことはあまりないという。
大呂さんは「ブラジルでは体外受精などの先進技術を使って、和牛を急速に増やそうとしている」と需要の高まりを見ている。「ブラジル肉牛界の主流は低コスト大量販売だが、和牛の導入をきっかけに商品価値を高めて販売する形を模索し始めている」と販売側の動きの変化にも言及した。
今井さんは「ブラジルでは牛は放牧されているため、足腰が鍛えられ体型が日本と異なる。背中のラインも平らで良い。品評会でも好評価を得られやすく、1頭からとれる肉の量が多い」と日伯の違いを語った。
帰国後は調査結果をまとめたレポートを作成予定。今井、大呂両氏はこれまでに欧米、オーストラリアなどでも同様の調査を行っている。大呂さんは「調査は研究が目的」としながらも、「海外の和牛産業に関する調査は、2000年頃から始まったばかり。オーストラリアなどで和牛の需要が高まってきており、今後の日本からの輸出拡大に向け、参考になるのでは」とも話した。
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ブラジル国産和牛に関する調査で来伯し、サンパウロ州内の食肉処理場など関連施設を視察した今井敬さんと大呂興平さん。日伯の様々な違いがあった中で、大呂さんは「日本に比べ牛肉処理が大ざっぱ。まだ肉が残っているものを廃棄していた」と明かした。現在のブラジルの主流である低コスト大量販売が原因か。今後和牛と共に「もったいない精神」も日本から取り入れたいところ。