連日、夕方から夜にかけて強い降雨が続いているサンパウロ市では、多くの地区で水害が発生し、死者も出ている。2017年のジョアン・ドリア市政発足時(現在はブルーノ・コーヴァス市長)、サンパウロ市政は「2020年末までに19の新たな大型遊水池(ピシノン)を造る」を公約に掲げていたが、完成は13にとどまりそうだと、10日付エスタード紙が報じた。
現在、サンパウロ市内には927の浸水危険箇所がある。2017年の時点で市内には24の遊水池があり、ジョアン・ドリア前市長は19の遊水池新設を公約した。だが、現時点で完成したのは8カ所で、年内にあと5カ所が完成する見込みだ。
コーヴァス市政は「市内の遊水池は今年5増えて、任期の終わりまでには37が稼動する」との声明を出している。
カンピーナス総合大学所属のエンジニア、アントニオ・カルロス・ズッフォ氏は、「ピシノンは、大量の雨が降った際に水が溢れ出すのを防ぐが、それだけでは不十分で、大局的視点からの治水計画が必要」と語る。
他の水害対策としては、500平米以上の建造物に小型貯水池(ピシニーニャ)設置を義務付ける。芝生など、雨水を浸透させる土地(「アーレア・ペルメアーヴェル」と定義される)を増やすなどがある。
ただし、サンパウロ市は地価が高く、「全ての治水対策は一つの大きな障害にぶつかる。それは『高額になってしまう』ということ」とズッフォ氏は指摘する。
サンパウロ市東部のジャルジン・パンタナールは2011年にピシノンが完成したが、継続的に水害に見舞われている。地域を流れる用水路が、ゴミの滞積などによって滞り、浸水を引き起こしてしまうのだ。
ジャルジン・パンタナール地区の一部、ヴィラ・イタインの自治会代表者エウクリーデス・メンデス氏は、「家具が水浸しになることにうんざりして、レンガで家具を作る人までいる」と語っている。
9日もサンパウロ市は、市内東部ヴィラ・カルモジーナ地区にある4軒の家、駐車場、工場1カ所ずつ、24軒からなるコンドミニアムを立ち入り禁止にした。これは8日夜の大雨で崖下にあるコンドミニアムの駐車場の地下に空洞ができて塀が崩れ、駐車場があった場所が大陥没を起こしたためで、住民たちが家に戻れる見込みは立っていない。
同市では雨期の夏は洪水、浸水被害が毎年繰り返されるが、昨年3月付のニュースサイト、メトロは、「サンパウロ市政が治水対策や、関連設備の新設・維持費に使う予算は2017年から2018年にかけて減少した」と報じた。
同サイトによると、17年の関連予算は4億8620万レアルで、18年は21%減の3億8270万レアルだった。